【三軒茶屋】温もりと風格が心地よく同居する、茶色の街
私の周りには、以前から三軒茶屋の街に魅了されて止まない知人がたくさんいます。
その中のひとり、三軒茶屋に住み続けている友人は
「ここで暮らしてる人も呑みに来る人もみんな、自然体なんだけど、どこか上品で余裕がある気がする。呑んだくれて路上で寝てる人を見たことがないし、誰かが揉めて声を荒げてるのも聞いたことがない。タガを外さずに日常を楽しめる人が集まってる。色で例えるなら、三茶はまさに“茶”色。温もりと風格が融合されてるような街だよ」
と、まるで長年連れ添った友人を自慢するかのように三軒茶屋を語りました。
そんな三軒茶屋の魅力を自身の目と心で体感すべく、実際に街へと繰り出してみました。
【三軒茶屋の基本情報】
駅名:東急田園都市線・東急電鉄世田谷線「三軒茶屋」
ランドマーク:キャロットタワー
渋谷は急行で1駅。都心へのアクセスは抜群
東京都世田谷区の東部に位置する三軒茶屋。「三茶」の呼称で親しまれる三軒茶屋は2018年の「住みたい街ランキング」にも上位にランクインするなど、人気を集める街としても広く知られています。
この三軒茶屋駅がアクセスしやすいターミナル駅は『渋谷駅』。東急田園都市線の渋谷駅から各駅停車なら2駅、急行なら1駅と、わずか3〜4分で到着することができます。
電車では乗換え必須の下北沢駅へも、茶沢通りを走る小田急バスに乗り込めば6分ほどで向かうことが可能。田園調布駅を終点とする東急バスは、駒込駅や自由が丘駅方面への移動の際にも重宝できそう。
人の生活に息付いた店が寄り集まる駅前
駅前に高くそびえるのは駅直通のオフィスビル兼、商業施設の「キャロットタワー」。1階には雑貨店やカフェなどのテナントが入り、2階には3万冊ものレンタルコミックが揃うTSUTAYAの大型店が営業しています。
さらに駅前にはドラッグストアにファミリーレストラン、100円ショップにコンビニなど生活に欠かせない施設が集約され立ち並んでいます。
特にスーパーは、西友を始めとした4店舗が駅から徒歩約5分圏内に展開されているので、帰宅ついでに買い物をする際に便利です。
思わぬ眼福に出会える心落ち着かせるスポット
駅から少し離れると、静かな空気が流れるスポットも。癒しとくつろぎを求め、2つの場所に立ち寄ってみました。
まず訪れたのは、三軒茶屋の駅から徒歩約9分ほどのところにある太子堂八幡神社。太子堂八幡神社が祀る誉田別尊(ほんだわけのみこと)は、主に厄除の象徴として崇められ、今も人々に神徳を授けています。
鳥居を潜り、境内に入った右手には小さな児童公園が。午後の陽光が差し込む中、近所の幼稚園の園児であろう子どもたちが敷地内を元気に走り回っていました。
参拝する前に手水舎で手を清めていると、こんな張り紙を発見。手水舎の奥へと進んでいくと、そこにはうさぎ小屋があり……
ふくふくとしたフォルムが愛らしい「幸せうさぎ」が身を寄せ合って暮らしています。思わぬ眼福にあずかることができました。
次にやって来たのが、三軒茶屋の駅から東急バスで3分ほどの三宿で下車し、駒沢通りを9分ほど歩いたところにある世田谷公園。その広大な敷地は、約7万9000平方メートルにも及びます。
園内中央の噴水から右方向に歩くとほどなくして見えるのが、この堂々たる佇まいの「D51-272」。昭和47年以前まで実際に線路を走っていた蒸気機関車を間近で眺めることができます。さらに、水土日・祝日は、蒸気機関車を模した「ちびクロ号」が園内の線路を走るのだとか。
園内左端にあたる「プレーパーク」にはユニークな遊具が。お子さんがいるご家庭には休日を過ごすのにうってつけのスポットではないでしょうか。
“奥三茶”は隠れた名店が潜む大人の秘密基地
こちらは、三軒茶屋のシンボルでお馴染み「ゴリラビル」。三軒茶屋の駅から5分ほど下北沢方面へ歩くとビルの屋上から身を乗り出した迫力満点のゴリラと出会えます。
このゴリラビルのある一帯は「奥三茶」とも呼ばれ、新旧問わず個性豊かな店が並び通りを活気付かせています。
カレー専門店激戦区としても知られる三軒茶屋。そこで、休日は列をなすほどの人気店、奥三茶の「SHIVA CURRY WARA(シバカリー ワラ)」にやってきました。
店内はカウンターを含め全12席。足を踏み入れた瞬間、芳しいスパイスの香りが広がります。現地出身の料理人が織りなす本場エスニックの味わいを、オーナーの山登さんが絶妙なさじ加減で日本人好みに調整し提供します。
この日は「カレー2種」(1,450円(税別))を注文。野菜が大胆に入った「季節野菜のサブジ」と、海の幸とココナッツの風味がマッチする「海老と渡り蟹のコロンブ」をセレクト。どちらも新鮮な味わいと多層的なスパイスの余韻が楽しめます。
一つ一つの店のアイデンティティが際立つ奥三茶。ゆったりと通りを探索してみてください。
「ここは一度住んでしまうと抜け出せない」
こちらは同じく奥三茶にあるバー「NOTOYA base(ノトヤ ベース)」。オーナーの岩崎さんは日本指折りの高級ホテル「ザ・ペニンシュラ東京」で4年間バーテンダーを勤めた後、地元である奥三茶に「NOTOYA base」をオープンしました。日頃からバーカウンター越しに三茶の人々と言葉を交わしている岩崎さんに、この街のことを尋ねてみます。
(※以下、「」内は岩崎さんのセリフです)
――「ザ・ペニンシュラ東京」のある有楽町・銀座と、三軒茶屋では客層はどのように違いますか?
「全然違いますね。まず三茶はスーツを着てる人が圧倒的に少ない。業種で言えばIT系やアパレル系、テレビ業界で働いていたり、美容師さんだったり。クリエイターも多いですね。いずれも8割が地方出身者の方だと思いますよ。彼らにとっては、三茶は一度住んでしまうと抜け出せない街ですから」
――それには何か理由があるのでしょうか?
「バーで友達がたくさんできるんですよ。バーテンダーもお客さん同士に共通言語がありそうであれば繋げたりする。そうやって徐々にコミュニティが育まれていくんです。初対面だった2人が、後日一緒に来店してくれるなんてことも多いですよ」
――そんな三軒茶屋の魅力を改めて言うならば?
「三茶には個々のキャラクターに合った店が必ずあるんです。一つの通りにリーズナブルな呑み屋もあれば、渋めの老舗焼き鳥屋もあるし、オーセンティックなイタリアンもある。混沌としてるけど、わい雑さは少ない街ですね」
「それと、24時間呑めるところかな(笑)。昼間から開いてる居酒屋に行った後は、夜中から朝の5時までやってるバーで飲み明かして、朝の6時から呑めるスナックに流れる、みたいなコースも可能です。呑兵衛にとっては、優しくて危険な街かもしれないですね」
腰を据えて付き合いたくなる街、三軒茶屋
暮らしに根付いた商業施設、悠々自適に余暇を過ごせるカフェや酒場、休日に英気を養える公園や神社。三軒茶屋はその全てが心地よく混在している街でした。
そこで営まれている店の個性が街に馴染み、人の心を豊かにする。渋谷に近い立地でありながら、雑多な印象が少ないのは、そんな三軒茶屋の街の性質が理由なのかもしれません。
柔らかな賑わいを肌で感じたい人はぜひ一度、三軒茶屋の街をゆったりと味わってみてはいかがでしょうか。
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