三井でみつけて

東京と軽井沢を軽快に行き来する二拠点ライフ

避暑のつもりで建て始めたセカンドハウス

カラマツやミズナラなどの木々が茂る、静かな森の奥。別荘が点在する閑静な地を車で走っていると、個性的な佇まいの建物を見つけました。フードディレクターとして多くのメディアやレシピ開発を手掛ける、川上ミホさんご一家の住まいです。東京のマンションと二拠点を行き来する生活を送る川上さん。軽井沢に2つ目の住まいを持ったことで大きく変化した、と語る現在のライフスタイルについて伺いました。

ご自身の子ども時代は、豊かな自然に囲まれた場所で伸び伸び育ったと語る川上ミホさん

川上さんご一家は小さなお嬢様のいる3人家族。ご主人は多方面で活躍するアートディレクターの川上シュンさんです。東京・代官山にマンションを購入したのは1年3か月前。三井不動産レジデンシャルグループが販売と管理をする物件で、事前の説明や購入時の対応が丁寧だったと言います。住みやすさを追求した新居は利便性も良く、不自由のない暮らしを送っていましたが、夏のあるとき、公園で遊ぶお嬢様を見ていて感じることがありました。

「暑さで顔を真っ赤にして、滑り台の順番待ちをしている様子を見て、できれば夏の間だけでも、涼しい場所で伸び伸び遊ばせてあげたいな、と思いました。都会は便利ですが、子どもを育てる環境としては自然豊かな地の方がより良いように感じられたのです」

そこから東京の住まいとは別に、サマーハウスを持つことを検討し始めます。川上さんご一家は以前にも京都に別荘を持っていた時期があり、生活の中にふたつ、拠点のあるライフスタイルがいかに有意義かを実感していました。その地に暮らす人々との関わり、文化との触れあいが感性を豊かにすると経験していたのです。

自ら建築を学ぶことで思い入れはさらに強く

土地探しにも時間をかけたという軽井沢の住まい。奥に見えるのが母屋で、手前にあるのはご主人用の離れ

軽井沢はミホさん自身が子どものころ、夏の避暑地として家族とすごした場所でもありました。東京との交通利便性が良く、自然豊かでありつつも、街の雰囲気は洗練されている。そんな軽井沢に惹かれて土地を探すこと数か月、ようやく見つけたのが、この場所。三井の森 軽井沢エリアのすぐ近くで、周囲の管理が行き届いていて、雰囲気が良いことも土地購入の安心材料になりました。設計にはミホさんの家族に対する思いが詰まっています。

「せっかく自然豊かな所に家を建てるのだから、屋内と屋外の境界を感じない作りにしたい。空間の広がりを感じるよう天井を高くしたい。そして広い敷地面積ではないので壁やドアはできるだけなくし、ひとつの大きな部屋のようにしたいと考えました。家を作る前から、完成形のイメージを強く持つことができたのです」

外からの光が部屋いっぱいに降り注ぐ空間。部屋の仕切りがないだけでなく、キッチン、リビング、ダイニングの明確なゾーニングも敢えてしない

設計を始める際のファーストステップとなる平面図の図面は、なんとミホさん自身が線を引いたもの。さらに床や壁などの建材、設備についても自身が何度もメーカーのショールームに通い、サンプルを手に取って決めました。もともと自分が興味をもったことは徹底的に調べなければ気が済まないタイプで、料理人となる以前にソムリエの勉強を始めたのも、大好きだったワインの知識を極めたかったから。建築については未経験でしたが、プロに設計を依頼するにあたって先方の意図を理解し、こちらの意思をしっかり伝えるため、率先して学んでいったそうです。

ミホさんの希望を叶えるために採用したのは、片面のほとんどをガラスサッシとし、開口部を大きく確保する設計。まるで森の中に現れた舞台のような佇まいです。母屋とは別に、独立したご主人専用のアトリエも作りました。

「ここは軽井沢野鳥の森に近く、庭に色々な鳥たちが訪ねてきます。今朝はすぐ近くにテンが遊びに来たんですよ」と、スマートフォンで撮った動画を見せてくれました。住空間の中にいながら自然の息吹が感じられる、希望通りの住まいです。

森の中にあってもログハウスのような雰囲気にはせず、洗練されたイメージで仕上げられたインテリア。石目調のフロアタイルもミホさん自身が吟味して選んだもの

ガラス面にカーテンやブラインドはありませんが、取りつけ道路の往来はほとんどなく、道路から奥まった場所に建物があるため、外からの視線は全く気になりません。寝室とリビングダイニングの間にドアは設けず、段差をつけて緩やかに空間を仕切る演出に。インテリア全体は落ち着いたモノトーンで揃えつつ、寝室だけはウォールナットの壁材で周囲を囲み、鳥の巣をイメージさせる空間としました。ミニマルな作りの中に温かさが感じられる空間演出が見事です。

「自然の中にあっても、山小屋のようにナチュラルすぎる雰囲気にするのは違う……できるだけシャープな印象にしたいな、と考えていました。主人と私で、住空間に対する好みがとても近かったのは幸いでした」

リビングとひとつながりの空間となっている寝室。こちらの窓にもカーテンやシェードはなく、陽の光を感じながら目覚めるそう

設備について、特にこだわったのは、やはりキッチン。職業柄、様々なキッチンに触れ、あらゆる選択肢があった中で最終的に選んだのは、既製品の中でもとりわけシンクのサイズが大きいものでした。大きな鍋やまな板をそのまま入れられるシンクと、ステンレス製ワークトップの使いやすさが機能面でのポイント。インテリア全体の雰囲気に合わせるため、デザイン性も重視されています。

「仕事だけでなくプライベートでも料理する時間を大切にしているので、住まい全体を考える中でキッチンは特に重視しました。ここで過ごす時間は長いので機能的であって欲しいけれど、インテリアとして主張しすぎないことも大事。東京の住まいではカウンター式キッチンを使っていますが、この間取りにカウンター式はフィットしないと思い、壁に向けた配置としました」

キッチンの目の前には大きな窓があり、こちらからも自然の風景がよく見えます。シンクやワークトップの下は大容量の収納になっており、豊富な調理道具をすべて収容できる構造。モノトーンのインテリアと合わせるため、キッチン側面のカラーは落ち着いたブラックとしました。キッチン全体が宙に持ち上げられたエアフロー構造になっていて、作業性が良いのも特長です。

「軽井沢は新鮮な食材が安く手に入るので、素材の味を活かしながらオリーブオイルを使って仕上げる、シンプルな料理が活きます。天気の良い日には大きな塊肉を買ってきて、デッキでバーベキューを楽しむこともあるんですよ」とミホさん。この地に来てから、料理することが一層楽しくなったと語ります。

キッチンはインテリア全体と色のトーンを合わせながら、機能性を重視してセレクト。大きなシンクと使い勝手の良いステンレス製ワークトップを備える

教育環境を重視した結果、二拠点の配分が逆転

当初、「夏の間だけ過ごす予定だから、断熱はそれほど必要ないのでは?」と考えていましたが、建築会社の人から「軽井沢が本当に美しいのは冬です。ぜひ冬の景色も楽しめる暖かい家にしましょう」とアドバイスを受け、断熱対策もしっかり施すことに。また石目調のフロアタイル下には床暖房が仕込まれています。断熱性を高めたので、小さなストーブと床暖房、そして窓からの日射しで部屋全体が十分に暖まる住まいになりました。結果、その判断は大正解。というのも、当初はサマーハウスとする予定でしたが、ある出来事により、一年の大半を軽井沢で過ごすことになったからです。

コロナ禍によりリモートワーク化が進んだことで、二拠点での生活になっても仕事への影響はなし。車だけでなく新幹線でも移動しやすいのが軽井沢の良いところ

「建築会社の代表とお話ししていたときに、軽井沢周辺は今、教育環境が面白いことになっている、と教えていただいたんです。自分でも調べてみたところ、子ども達自身が興味をもって学んでいくことを大切にし、大自然の中で今日は何をして遊び、何を学ぶか、自分たちで決めることをテーマとした幼稚園が新たに設立されようとしていることを知りました。娘をぜひその園に通わせてあげたいと思ったのです」

生活の中心地をシフトさせる大きな決断でしたが、ご主人に相談すると「いいよ」とあっさり了承してくれたそう。現在、一週間のうち、4日間ほどを軽井沢で、それ以外の日を東京の自宅もしくは出張というスタイルを送っています。そうした二拠点生活を始めてから約一年。お子様は自然の中で逞しく成長し、ミホさん自身も東京だけで暮らしていた頃より、大らかな気持ちで毎日を過ごせるようになりました。新たな土地での生活に、心から満足しています。

高い天井から吊り下げられたハンモックは、お嬢様が気に入っている場所のひとつ。壁に飾られたアートはご主人のお気に入り

「冬の景色は本当に素晴らしくて、その美しさに毎日感動していました。都会で生まれ育った主人が地方での暮らしに馴染めるか、最初は心配していたのですが、結果的に二拠点生活を一番楽しんでいるのは彼。今ではゴミ出しを率先して引き受け、『朝の空気が気持ちいい』と言いながら帰ってきます」

間もなく、木々が芽吹き始め、窓から見える景色が一変する季節。季節の移り変わりをつぶさに感じられる住まいで、お子様の成長を温かく見守るミホさんの姿が印象的でした。

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