三井でみつけて

自然の中で遊ぶように暮らす夢を、地方移住で実現

キャンプとの出会いが人生を変えた

都会からIターンで田舎暮らしを始める人が増えています。埼玉県ときがわ町で“キャンプ民泊”「NONIWA(ノニワ)」を運営する青木さん夫婦も、以前は都会に暮らしていたIターン組。新天地で豊かな人生を手に入れ、自然が身近にある今の生活を満喫しています。何が彼らを田舎へと誘ったのでしょうか?

ふたりが出会ったのは、同じ大学に通っていた頃。ともに放送関連学科で学んでいました。卒業後、ご主人はアフリカ専門の商社に、奥様はテレビ制作関連の会社に就職。就職後も順調に交際期間を重ねて結婚し、東京都内で暮らし始めました。

「その頃はまだ都内に住んでいましたが、自らプロデュースした私たちの結婚パーティは、埼玉県にある古民家ゲストハウスに友人たちを招いて開きました。当時から田舎で暮らしたい欲求があったのかもしれません」とご主人。結婚後に共通の趣味として始めたキャンプが、人生を思いも寄らぬ方向に導きました。

かつては放送作家を目指していたこともあるご主人。人を楽しませる企画を考えることが好き

奥様は「私が子どもだった頃、家族でよくキャンプに出かけました。その頃の楽しい思い出が残っていて、家族をもったらキャンプを始めるもの……と勝手に思い込んでいたんですよね」と笑って話します。ご主人はもともとインドア派でしたが、奥様に誘われて挑戦。夫婦揃って見事、キャンプの楽しさに目覚めます。新婚旅行に行くのを取りやめ、貯金でアウトドア用品を買い揃えてしまうほど夢中になりました。

ちょうどその頃、奥様はテレビディレクターとして地方で活き活きと暮らす若者たちを取材し、田舎暮らしに憧れを抱くようになります。

「子どもの頃は父が転勤族で、ひとつの場所に長く暮らしたことがありません。仕事を通して地域のために汗を流して活動する若者たちと出会い、そうしたライフスタイルに憧れを抱くようにました。私にも地元が欲しい、と思ったのです(奥様)」

テレビの制作会社勤務を経験して、地方の魅力を知った奥様。「田舎暮らしって掃除や草刈りなど意外にやることが多く、仕事以外になかなか手が回りません」とのこと

中継地に作って生活基盤を徐々にシフト

最初は田舎に引っ越して、ふたりでカフェでも開こうか、と漠然と考えていました。しかし、せっかくなら趣味のキャンプと田舎暮らしを連結させることができないか? と妄想。ついに、あるアイデアを思い付きます。それが、未経験者向けに誰もが気軽にキャンプを体験できる民泊施設でした。キャンプを初めて始めるのは意外にハードルが高い。道具の選び方や使い方、マナーを初心者に分かりやすく、丁寧にレクチャーしてくれる場所があったら、敷居を下げることができるのではないか? この着想をきっかけに、田舎への移住を決断します。

ときがわ町を選んだのは、豊かな自然に囲まれていながら利便性も良く、環境が厳しすぎなかったから。山のなだらかな稜線、里山の牧歌的な風景が、ゆったりとした生活を望むふたりにぴったりでした。

NONIWAのすぐ近くを流れる小川。豊かな自然環境の中で暮らすことが青木さん夫婦の夢だった

ただ、いきなり今まで住んでいた場所も、仕事も捨ててしまったわけではありません。新たな住まいを探すための一時的な拠点として、都内から埼玉県川越市に引っ越します。川越市からときがわ町までは1時間以内に行ける距離。住まい探しと通勤、どちらにも便利な場所です。物件を探すだけでなく、ときがわ町で開催されていた起業塾や地域の行事にも参加し、事あるごとに「ときがわ町でキャンプ民泊をやりたいんです!」とアピール。地域住民とのつながりを作りながら、少しずつ生活の基盤を移していきました。

希望にぴったり合う物件がようやく見つかったのは、移住を決めてから2年近く経ってからのこと。その物件はかつて友禅染めの作家が別宅として所有していた古民家で、その人が亡くなったため売りに出されていました。不動産情報サイトに掲載されているのを見つけ、地図で確認すると、周囲は里山に囲まれ、近くに小川が流れる素敵なロケーション。すぐ隣にキャンプ体験で使えそうな遊休地もあります。内見したところ、内装もステンドグラスが使われるなど大変凝っていて、申し分ありません。期待以上の物件が見つかったことに思わずテンションが上がりました。

柵に囲まれた広い土地がキャンプ体験用のフィールドで、その奥に見える白い建物が青木さん夫婦の自宅兼ベースステーション
前オーナーにより、ときがわ町に移築された古民家。ステンドグラスは前オーナーの趣味だが、青木さん夫婦の好みにも合っていた

ただし売却を前提としていたため、賃貸にできないかオーナーと交渉しなければなりませんでした。新生活の経済的リスクを考えると物件は購入でなく、賃貸契約としたかったのです。すると、偶然にもオーナーの友人が青木さん夫婦の存在を知っており、ここで地域に根ざした活動をしたい夢を伝えてくれ、快諾。別の人が所有していた隣の遊休地も借りることができ、無事、キャンプ民泊を始める準備が整いました。

前オーナーの息づかいを感じる住まい

現在、古民家は一階を民泊利用客にくつろいでもらうためのベースステーションに、二階を青木さん夫婦の寝室にしています。もともと一階の押し入れがあった場所は有孔ボードを一面に貼って、貸し出し用のキャンプ道具等をディスプレイ。L時金具をブラックに塗装し、アイアン風の仕立てとするなどして、モダンな印象にDIYされています。所々に置かれたエキゾチックな柄のクッション等もオシャレ。床をステイン塗装したり、テント設営地の草を刈ったり、看板を作ったりする作業は、仲間たちが手伝ってくれました。

押し入れだった場所を活用し、レンタル用備品を配置するスペースに。見せるインテリアに憧れていたため、有孔ボードをDIYで施工した

「この場所を借りる前、川越に住んでいた頃から『野あそび夫婦』というユニット名で活動し、“自然のなかで遊ぶように暮らす”をコンセプトにSNSで情報発信してきました。コンセプトに共感してくれた仲間たちがNONIWAの開業準備を手伝ってくれたのです。とても助かったのですが、みんなプロではないので床の塗装とかけっこうムラがあったりします。まあ、それもビンテージ感が醸し出されて、結果としては悪くなかったかな」と、ご主人。学校の文化祭準備をしているかの風景が想像されます。

現在、ときがわ町に移住してから約2年。家の中を探索すると今なお「何のために使うものか分からない」道具が出てくることがあります。

「先日は棒の先にフォークが付いている不思議な道具が物置から見つかり、何に使う道具だろうね、と、考えましたが、分かりません。ふと上を見上げると、高い所に掛け軸をかけるためのフックが。これか! とふたりで膝を打ちました」

大きなワークテーブルのあるキッチンに立つ奥様。キャンプ泊をするお客様が利用することも可能、キッチンスタジオとして貸し出すこともあるそう

キッチンにはピザも焼ける薪ストーブが設えられていました。換気扇を付けると、その暖気が居室側に流れる仕組みに気付いたときは、前オーナーがこだわった住まいの作りに感心したそう。家の中に居ながらして毎日、探検気分を味わっています。

キッチン奥にある薪ストーブは元々の設備。食器用のオープンシェルフは引っ越してから置いたもの。オリジナルの趣きに逆らわないインテリアだ
一階の居室奥にある梯子を登ると、隠し部屋的なスペースを発見。現在はひとり静かにこもれる場所として活用

周りの人たちを巻き込むのが地方移住のコツ

それにしても、新たな土地で、新たな仕事をすることに不安はなかったのでしょうか? ご主人はこう語ります。

「思い切ったことをしたね、とよく言われるのですが、仕事については、私が前職の職場に通えることを前提に地域を選び、民泊の運営が軌道に乗るまでは会社勤めを続けてきたので、経済的な不安は特にありませんでした。いわばパラレルワークです。

地域についても約2年の歳月をかけてじっくり候補地を探し、少しずつ地元との関係を築いてきたつもりです。何より、この地が好きだから暮らしたいんだ、と地域の人に伝えることが地方移住を上手く進めるコツかもしれません」

十分な準備期間を経て、「自然の中で遊ぶように暮らす」ライフスタイルを叶えた青木さん夫婦。今後は「自分たちの施設だけでなく、ときがわがアウトドアの街として見直され、街全体がツーリズムになる流れを作れていけたら素敵ですね」と新たな夢を語ります。これからの“ふるさと”は生まれた場所でなく、自分たちで作るのがスタンダードになるかもしれません。三井のリハウスでは、土地を探せるサービスもあります。ご自分の新しい「ふるさと探し」をはじめてみるのもいいかもしれません。

大学時代の仲間には、学生時代からずっと変わらないふたり、と思われているという青木さん夫婦。NONIWAのロゴマークは地域活動で知り合ったデザイナーが作ってくれたもの

こだわりの土地に暮らす

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