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「二拠点生活は“都会でやりたいこと”“田舎でやりたいこと”、どちらも手にすることができるんです」
そう満足そうに語るのは神奈川県と山梨県で「二拠点生活(デュアルライフ)」を送る安井省人さん。現在、安井さんはお仕事がある日はお1人で神奈川県川崎市に住み、休日は山梨県北杜市小淵沢で家族と過ごす生活を送っています。
そんな二拠点生活を始めたのは2016年から。もともと神奈川県川崎市の分譲マンションに暮らしていた安井さんは、双子のお子さんたちの保育園探しを機に、都会での子育てについて考えるようになりました。
「もともと『将来的には田舎暮らしをしたいね』と話していたこともあり、2015年1月、心機一転移住しようと思い立って、土地探しを始めました。田舎といっても、歩いて気軽にコンビニに行けるような田舎ではなく、きちんと都会とは異なるライフスタイルを送れる田舎がいいねと話していました。」
子育ての環境や都内へのアクセスを考え、さまざまな土地を巡る中でたどり着いたのが山梨県北杜市の小淵沢でした。小淵沢の北側は別荘地として有名ですが、安井さんはあえて小淵沢の南側を選んだといいます。
「田舎暮らしといっても、人々の暮らしの営みが感じられる『里山らしさ』を大切にしたいと思っていました。別荘地である小淵沢の北側は訪れる人にシーズン性があり、お店も別荘向けの店舗が多く、普段いる場所ではないなと感じました。その点、小淵沢の南側は移住者も多く、適度な距離感で受け入れてくれそうな土壌があり、ここで暮らしたいなと思って移住を決断しました。今では時々近所の方が野菜を持ってきてくれたり、子どもたちだけで近所の家に出掛けたりと、人との関わりを通して、引っ込み思案だった子どもたちも社交的になりましたね」
里山らしい暮らしがある小淵沢へ、当初は安井さんもご家族とともに完全移住することを考えていました。しかし、編集ディレクターという職業柄、都内での仕事がほとんど。毎日山梨から都内へ通勤するのは体力的に難しいと感じ、お仕事がある日は神奈川県のマンションに住む二拠点生活を決断しました。
「もともと二拠点生活をするまでは、プライベートの時間も仕事をしていて、家族と動物園や買い物に行く時もパソコンを持ち歩くオンオフのない生活をしていました。それが、仕事がある日と休日に過ごす場所を変えることで、自然とオンオフのスイッチが切り替わるようになったんです。僕自身も休日に仕事を持ち帰らないよう、より計画的に仕事に取り組むようになりました」
そうした二拠点生活で変わっていく安井さんの姿を見て、奥様の陽さんは大きな変化を感じたと言います。
「これまでは1泊2日の旅行にもパソコンを持っていくような人でしたが、それもなくなりました。普段離れている分、家族での時間を大切にするようになりましたし、夫婦仲もより良くなりましたね(笑)」
安井さんご夫婦が現在の住まいでこだわった1つ目のポイントは、「その場で料理をして、その場で食べられる」スタイルを目指したダイニングテーブルとキッチンです。一緒に料理をすることも多いそうで、キッチンは2人で立てるような広さが設けられています。またダイニングテーブルとキッチンの間に段差を設けることで、ダイニングテーブルに座る子どもたちと目線の高さが合うように設計されているなど、家族で囲む食卓にはさまざまな工夫が施されています。
2つ目にこだわったのは、間仕切りのない部屋づくりです。玄関から1階のリビングダイニング、階段から2階の子供部屋、さらにはロフトまで、柱があるだけで壁はありません。加えて、1階から2階、ロフトまでは吹き抜けになっており、開放的な空間づくりがなされています。そのこだわりについて、安井さんはこう話します。
「親も子どもも部屋に閉じこもることなく、開放的に家族で過ごしたいと思ったんです。子どもたちがどう成長するかはわからないですが、成長したとき、少なくとも顔色や様子が見られるようにしておきたかった。それに僕の経験から、実家を出たあとの自分の部屋が物置になっている姿を見て、子どもたちが成長して夫婦だけになっても過ごしやすいように“部屋を作りすぎない”ことを意識しました」
開放感を大切にする姿勢は、家の三方に広がる大きな窓からも見て取れます。都会に住んでいたときは、近所の方とは挨拶をする程度だったため、外からの目線が気になったそうです。しかし、今では通りの突き当たりに住まいがあることもあり、家の前は見知った人しか通らないため、大きな窓であっても人目が気にならないと言います。
そんな田舎と都会での二拠点生活を始めてからは住宅ローン返済額も光熱費も上がったそうですが、図らずもメリットが生まれたと言います。
「山梨では休日に計画的に買い物をするようになり、平日は1円も使わない日もあるんです。使う場所がないから無駄遣いもしなくなった。だから必要なところに必要なコストをかければいい。そんな生活が楽しいんです」
「山梨の暮らしでは、子どもたちにとって欲しいものやしたいことが必ず近所にあるとは限りません。けれど今の時代、大抵のものはネットショッピングで買うこともできるし、慣れてしまえばそんなに困らないんですよ。それよりも、今はこの風景や空気、季節を感じることを大切にしてほしいと思っています。季節が変わると新しい花が咲いたり、七草を喜んだりする。子どもたちはそういったことをイベント感覚ではなく日常として知っています。親がきっかけを与えなくても、子どもたちが星空を見て、興味・関心を持ち、図鑑を広げる。この環境が今の子どもたちにとってはいいなと思っています」
そう田舎暮らしの良さを語る安井さんは、時々、あえて子どもたちを都会に連れて行くこともあるそうです。
「田舎暮らしという選択をしても都会を知らないでいいと思っているわけではありませんし、最先端のIT技術やプロダクトに触れないでいいと思っているわけではありません。田舎らしさと都会らしさどちらも経験することで、子どもたちの見識を広げられればいいですね」
普段離れていてもお互いに信頼しているからこそ、二拠点生活でも、三拠点でも大丈夫。そう目を合わせて笑う安井さんご夫婦からは、強い絆が感じられました。