1995年に「人類の歴史上重要な時代を例証するある形式の建造物、建築物群技術の集積、または景観の顕著な例」として世界文化遺産に登録された飛騨・白川郷。築後300年余りの合掌造りの家々が、現在も美しい姿を保てている理由を探ります。
-大人の社会科見学-古の知恵が詰まった飛騨・白川郷合掌造り集落を巡る。
世界中から注目を浴びるきっかけとなったのが、ブルーノ・タウト氏が執筆した「日本美の再発見」。
白川郷の合掌造りが世界的にも注目されるようになったのは、ドイツの著名な建築家であり建築学者でもあるブルーノ・タウト氏(1880〜1938)が著書「日本美の再発見」で合掌造りについて記述したことがきっかけ。
ブルーノ・タウト氏は1933年から1936年の3年余り日本に滞在し、各地を旅しながら日本が世界に誇るべき美の再発見を行いました。
ブルーノ・タウト氏が白川郷を訪れたのは1935年の5月。著書の中で「白川郷の合掌造りは建築学上合理的であり、かつ論理的である。この景色は日本的ではない。少なくとも私がこれまで一度も見たことがない景色。ここはむしろスイスか、さもなければスイスの幻想だ」と述べています。
このブルーノ・タウト氏の高い評価により、白川郷の合掌造りは世界中の人々の関心を集めるようになったのです。
白川郷に今も息づく「結」と「合力」が合掌造りの家を守り続けてきました。
合掌造りは、梁(はり)の上に、手の平を合わせるように山形に木材を組み合わせて建築された建物。勾配が急な茅葺きの屋根が特徴です。こうした建物はほかの地方にも見られますが、白川郷の合掌造りは屋根の両端が本を開いて立てたように三角形になっている「切妻合掌造り」。積雪が多いうえ、雪質が重いという白川の自然条件に適した構造になっています。また、白川の風向きを考慮して南北に面して建てられ、風の影響を最小限に抑えるとともに屋根に当たる日照量を調整。夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるように工夫されています。
白川郷集落の生活は、昔から個々の家の助け合いと協力によって営まれ、今日まで維持・存続されてきました。なかでも家々の私的な関係において行う代表的な共同労働が「結(ゆい)」と「合力(こうりゃく)」です。
「結」は提供された労働に等量の労働で返す労働交換。いわばギブ・アンド・テイク精神です。「結」によって成り立っているのは田植えや稲の刈り取り、養蚕、材木の伐採など。そして合掌造りの顔でもある茅葺屋根の葺き替え。これは数多くの人手を必要とする大変な作業ですが、集落総出で協力して葺き替えます。
「合力」は冠婚葬祭時や災害時などに集落の慣習として自発的に行う労働力を指します。おかえしを条件としない労働奉仕です。本家・分家間、親類間が主ではありますが、付き合いの深い近隣住民も加わります。
集落が山間部に位置し、冬季には雪に閉ざされ孤立が余儀なくされる白川郷だからこそ生まれた「結」と「合力」。地域の人々で互いを助け合う優しい気持ちが、築後300年が経過した今も合掌造りの家々を守り続けているのです。
INFORMATION
白川郷・五箇山の合掌造り集落
岐阜県大野郡白川村萩町2495-3
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