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究極の快眠部屋 | 脳出血で倒れた父親に健康になってもらうため、「快眠部屋」をプレゼントしてみた

2018年12月24日、筆者の父親が倒れた(ヘビーな導入で申し訳ない)。原因は脳出血である。元々、高血圧だったため、いつか倒れるんじゃないかとは思っていた。

すぐに救急車を呼び、入院生活を余儀なくされたわけだが、おかげさまで先月無事に退院することができた。右半身に多少のしびれは残っているものの、日常生活に支障がない程度には回復している。

ただ心配なのは、本人の希望もあって父親が一人暮らしをしていることだ。次、いつまた倒れるんじゃないかと、気が気でない。

せめて、再発のリスクを少しでも抑えるため、健康的な生活をしてほしい。その第一歩として、まずはしっかりとした睡眠をとってほしいと思っている。

そこで、父親のために「快眠部屋」をプレゼントすることにした。

■専門家に聞く! 快眠のために必要なことは?

快眠部屋を作る前に、睡眠の専門家に「快眠のポイント」を教えてもらおう。お話を伺うのは、新橋スリープ・メンタルクリニック院長の佐藤幹さん。佐藤さんは「睡眠学」を専門とし、過眠症、不眠症などの研究を行う、いわば眠りのスペシャリストである。

▲JRほか新橋駅から徒歩3分

――初歩的な質問なのですが、健康のためには睡眠ってやっぱり大事なんでしょうか?

佐藤さん(以下省略)「はい。睡眠は脳と体に休息を与えるほか、様々な役割があります。記憶の定着をはじめ、免疫力の活性化、脳の老廃物除去、ホルモンバランスや自律神経を整えるといった役割ですね。睡眠がおろそかになると、病気のリスクも上がっていきます。例えば、老廃物が除去されないと認知症になる恐れがあり、自律神経が乱れると高血圧につながります。つまり、快眠は生活習慣病の予防になるといえるでしょう」

――では、どうすれば快眠できるんでしょうか?

「まずは夜にしっかりと寝るために、生活リズムを整えることです。特に、毎日決まった時間に起床することが大事ですね。というのも、人は起床から16時間後に眠気が出てくるようになっているんです。そのため、23時に寝たいのに9時に起きていたら25時まで眠気は来ません。まずは起きる時間を一定にすることが快眠への第一歩と言えるでしょう」

▲就寝が遅くても、いつも通りの時間に起きた方がいいそう

――ちなみに、就寝は何時が理想ですか?

「理想的な睡眠時間は6.5〜7時間とされています。ただ、21時、22時台は眠りが深まりづらい時間帯なため、23時半頃に就寝するのが良いと思います」

――睡眠環境はどうしたらいいでしょうか?

「真っ暗な部屋だと寝ることを意識してしまうので、間接照明やローソクの灯りなど、物がぼんやり見えるくらいの明るさがオススメです(目安は39ルクス)。色はオレンジ色が好ましいですね。テレビやスマホなどの青い光は睡眠を導くメラトニンを抑制してしまうため、避けましょう。また、温度は27度以上、または15度以下は不快に感じるため16度〜27度の間に設定し、湿度は50%〜60%が望ましいです。あとは、好きな音楽や香りに癒されるのもオススメですね」

▲就寝前のスマホは安眠を妨げるため、ほどほどに

――ちなみに父親は肥満体でいびきをかき、おまけに無呼吸症候群なんですけど、何か快眠のためのアドバイスはありますか?

「無呼吸症候群は高血圧や糖尿病、ひいては不整脈、脳卒中、虚血性心疾患などの危険性を高めます。肥満体とのことなので、まずはやせることが先決ですね。すぐに実行できる対策としては、気道を確保するために横向きで寝るのが良いでしょう」

■プロがオススメする快眠サポートアイテムとは?

快眠の基本的なポイントについては分かった。次は、実際に快眠部屋に取り入れる寝具やグッズについて学んでいこう。お話を伺うのは『驚くほど眠りの質がよくなる睡眠メソッド100』の著者である、睡眠環境プランナーの三橋美穂さん。三橋さんは寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手掛ける、いわば快眠のプロフェッショナルだ。なお、今回は合計5~6万円の予算で4~5点のアイテムを購入する予定。

――さっそくですが、オススメの快眠アイテムを教えてください。

三橋さん(以下省略)「快眠には、やはりマットレスと枕が大事です。そこで、まずオススメするのは『昭和西川のムアツパッド』。凹凸構造が特徴の、マットレスの上に敷くパッドです」

▲さっそく購入。1万8000円(税別)

「無数の凹凸が身体を面ではなく点で支え、体重圧をバランスよく分散してくれます。ゆえに身体が沈みすぎず、理想的な寝姿勢を保ってくれますよ」

――気持ちよさそう! 枕はどんなものが良いでしょうか?

「予算内だと、枕は『アスリープ ファインレボピロー I・FIT(さらりタイプ)』がオススメです。睡眠の質は枕の高さによって大きく変わってくるのですが、こちらは自分が最も寝心地の良い高さに調整できます」

「枕の中に5mmと10mmのシートが入っていて、これを抜き差しすることで高さを調整します。また、シートは部位ごとにカットできるようになっているため、自分の頭にフィットするよう形も変えることが可能です。ちなみに、組み合わせは31通り。ぜひ、理想の枕を作ってみてください」

――そんな枕が開発されていたとは……。この枕なら気道を確保してくれるので、いびきも減りそうですね。

「いびきをかく方ならば、横向きで寝る方が良いと思うので抱き枕はいかがでしょう? テイジンの抱き枕は、体を心地良く預けられるように計算された形なので、どんな寝姿勢でも快眠をサポートしてくれると思います」

▲確かにすばらしい抱き心地

――マットレス、枕、抱き枕。これだけでも快眠できそうですが、やや予算が余ったので、他にも何かありますか?

「では、パジャマはどうでしょうか。表面はガーゼ、肌側はパイル地の今治タオルの生地を使ったこちらがオススメです」

▲「今治ブランド」を証明するタグ付き

「この『今治ガーゼタオル無地パジャマ』は、今治タオルの吸水性はそのままに、通気性も抜群なので寝苦しい夏の夜でも快適ですよ」

▲表面は肌に優しいガーゼ地、裏面は短めのパイル地となっている

「あとはこちらの『スリーピオン3』もいいと思います。人間の三感である『聴覚(音)』、『嗅覚(香り)』、『視覚(光)』を刺激し、快眠へと導いてくれますよ。音はクラシック曲や自然音を収録し、香りは14種類のアロマシートから気分に合わせてセットすることができます。さらに、光はローソクをイメージした優しい光が灯ります」

▲高級エステサロンみたいな高貴な香りがした。ものすごくリラックスできそう

■快眠部屋をつくろう!

というわけで、快眠に必要な要素、アイテムともに準備万端整った。さっそく、親父の寝室を「快眠部屋」へと改造しよう。

▲左が息子、右が親父です

親父に企画趣旨を説明し、さっそく作業に移る。……寝起きであまり理解はしてなさそうだが。

▲ちなみにビフォー

ちなみに、こちらがいつもの親父の寝室。気になるのは布団の柄ぐらいで、特に変わったところはない。

▲友人が助っ人に来てくれた

まず着手するのは壁紙。殺風景な白いクロスから、リラックス効果のある薄いブルーに変更する。
ただ、壁紙貼りは初体験。一枚目からもたついていると……

顔を洗ってしゃっきりした親父から指導が入った。じつは親父殿、土木建築業を営んでおり、クロスの貼り方も熟知している。どうやら、本職の血が騒いでしまったらしい。

親父「壁紙っていうのは上から貼っていくものだから。それで、ある程度の長さが決まったら余裕を持って先に切っちゃうんだよ」

なるほど。我が親父ながら頼もしい。さっそくアドバイス通りに貼っていく。

とはいえ、そんなにすぐ上達するはずもなく……壁紙の間に空気が入ってしまった。

うわぁ〜めっちゃ不満そう。
……申し訳ないが、あんたの息子は不器用なのだよ。

なんとか1枚目を貼り終えた。少し余った部分はカッターと定規を使ってカットする。

背後では現場監督の鋭い目が光っている。これは、何か物申したい時の表情だ。筆者が昔、金髪にした時もこんな顔をしていた。

痺れを切らしたか、ついには作業に参加してきた親父。実演を交えつつ、「壁紙を貼る時、手で八の字を描いてみろ」とベスト・キッドの師匠みたいなアドバイスをしてくる。

中心で手を合わせ、

八の字を描きながら、外側へ広げる。

おお、確かに綺麗に貼れた。さすがミスター・ミヤギ、いや親父。

奥義を習得したことで、作業は一気にはかどった。

「終わりが見えてきたら、今度は逆の端から壁紙を貼りなさい。帳尻は端ではなく、真ん中で揃えるのじゃよ」と、ますますアドバイスに熱がこもる親父。実際には「じゃよ」とは言っていなかったが、この方が師匠っぽいので、親父の語尾はこれ以降「じゃ」にします。

難関はコンセント部分。ここ、どう貼ればいいんだろう?

師匠「そこは一度、カバーを外してから貼るんじゃ」

師匠「壁紙を貼った後にカッターで切り開けば、見た目が綺麗に仕上がるのじゃ」

アドバイスのおかけで、難所も無事クリア。

と、この通り、初めてにしてはまあまあ綺麗に貼れた。若干空気が入ってしまったが、まあこれくらいはいいだろう。

と、思ったが仕事に厳しい師匠は許してくれない。壁紙を美しく仕上げる「空気抜き」の方法を伝授してくれた。

例えば、こちらの空気。

カッターで真ん中部分に切り込みを入れ

切った部分を指でなぞると平らになる。気持ちいいー。

■果たして、本当に快眠できるのか?

思いのほか、壁紙で手間取ってしまった。ここからは、購入した快眠アイテムをセットしていこう。

専門家御用達のアイテムたち。普通に自分が欲しいものばかりだが、今回は親父に全て進呈しよう。親孝行って金かかるんだな。

何だかうれしそう。よかったね、親父。

「ほら見ろよ〜、裏地が今治タオルになっているんだぜ」とはしゃぐ親父。

僕が買ったのだからもちろん知っている。しかし、喜んでくれているようなので何も言うまい。

▲セッティング終了

リラックス効果を高めるブルーの壁紙、理想的な寝姿勢を保つ敷パッド、心地よい頭の高さに調整できる枕、安眠へ誘う音、香り、光を放つガジェット、いびき防止の横向き姿勢をサポートしてくれる抱き枕、そして今治パジャマ……。これこそ(僕の財力でできる)最高の快眠部屋である。

佐藤先生に教わった通り、温度と湿度もしっかり調節。これで準備万端。さっそく寝ていただこう。

おやすみ……親父。いい夢みろよ!

*
*
*

……翌朝、親父からメッセージが届いた。

【報告】
熟睡度80%です。就寝中、クロスの匂いが気になったけど、Sleepion3の香りで寝れました! 音楽も最高!
マットレスも良いですね! いつもより30分早く起きたけど、かなり爽快! 枕はこれからカスタムしていきます!
本日の夜も楽しみです。では!

普段の熟睡度がいくつなのか分からないので80%が良いのか悪いのか不明だが、文面を見る限り満足してもらえたようだ。それに、寝るのが楽しみになっているみたいで何よりである。ぜひこの部屋で健康を取り戻してもらいたい。

【取材協力】
新橋スリープ・メンタルクリニック
http://www.sleep-mental.com/

快眠セラピスト/睡眠環境プランナー 三橋美穂
http://sleepeace.com/

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