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次々枯れるベランダ植物の悲劇 ベランダ殺植事件ファイル | 次々枯れるベランダ植物の悲劇 ベランダ殺植事件ファイル

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~ある日の朝~

prof_mam
大変!!
prof_dan
どうしたんだ。
prof_musu
朝から騒がしいな……。
prof_mam
ベランダで育てていたバラが枯れてるの!

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prof_dan
なんで一体……ちゃんと毎日、水をあげてなかったのか?

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prof_mam
あげてたわよ……。

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prof_musu
え~、お母さんのせいなんじゃないの?

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police

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prof_tantei探偵
事件現場はここかな…? どうも。初めまして、“殺植探偵”です。

一同:殺植探偵……?

prof_tantei探偵
植物が枯れて殺されてしまった事件を解明するのが、“殺植探偵”。僕は、これまで数々の殺植事件を解いてきた名探偵。僕に解けない事件はありませんので、みなさんどうぞご安心を。さて、今回の現場となったベランダは、密室。外から誰かが侵入して、バラを枯らしたとはとても考えにくい。つまりこれは密室殺人……犯人はこの3人の中にいる!

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一同:そんな……。

prof_tantei探偵
みなさん、一人ずつ状況を教えてください。
prof_mam
毎朝、いつも決まった時間に私が水やりをしていました。ただ、最近はパートを始めたので、外出することも多くて……そんなときは、娘に水をあげるようにお願いしているんです。ちゃんとやってくれたかどうかはわからないですけど。
prof_musu
ちゃんとあげてたけど。

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prof_mam
じゃあ、どうして枯れちゃったのよ……!
prof_tantei探偵
奥さん、落ち着いてください。娘さんはどうでしょうか。

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prof_musu
そう言われても……。さっき言った通り、お母さんから頼まれたときに水やりをしていただけですけど。あと、たまに写真を撮ってインスタにあげたりとか。普段は家にいても自分の部屋で過ごすことが多いので、そんなによく見てないからわかりません。……ただ、少し前に水をあげていたときに、ちょっと元気がないような状態だったから、肥料をあげたんです。
prof_tantei探偵
肥料?

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prof_musu
そうです。ちゃんとお花屋さんに相談して選んだので、その肥料のせいじゃないはずですけど。
prof_tantei探偵
なるほど。では、最後にお父さんは?

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prof_dan
普段は仕事で家にいる機会も少ないので、植物を育てるのはお母さんに任せていました。だけど、このバラを買ってきたのは私です。ちょうど結婚記念日だったので、何かプレゼントしたいなと思っていて。そんなとき、殺風景なベランダのことを思い出したんです。ベランダにお花があったらいいんじゃないかなと思って、お花屋さんでいくつか植物を買ってプレゼントしました。
prof_mam
そうなんです。だから大事に育てていたのに、まさかこんなことになるなんて!(泣)

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prof_tantei探偵
思い入れのあるバラだったんですね…。犯人め、許せない……。う~ん、しかし、手がかりが少ないな。困った……。

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結局、それ以上の手がかりは見つからず、謎は解けないままその場は一時解散となった。しかし、それからしばらく経った後、またしても事件は起きた―……。

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~数カ月後~

prof_mam
まただわ!
prof_dan
今度はどうした!?

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prof_mam
今度はチューリップに白い斑点ができているの……。
prof_dan
一体どうして……。

police

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prof_tantei探偵
こんにちは。
prof_mam
殺植探偵さん……。
prof_tantei探偵
う~む。まさか、また事件が起こるとは……。
prof_dan
このチューリップは、私が出張でオランダに行ったときにお土産で買ってきたものだったのに。やはり日本の環境には合わなかったのでしょうか。

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prof_mam
でも、花が咲くまではすくすくと育っていたから……。そういえば、最近はパートのシフトを増やしたので、娘に水やりを任せることが多くなっていたんです。やっぱり、水をあげてなかったからとしか思えない……。
prof_musu
ちゃんとあげたってば! その証拠に、ほかの植物は枯れずに元気じゃない。ほら、洗面所にあるアジアンタムだって……。

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prof_musu
……え!
prof_mam
どうしたの?
prof_musu
こっちにあるアジアンタムの葉っぱも……枯れ始めてる……。
prof_tantei探偵
そんな……いつの間にか第3の殺植事件が起きていたとは―……。
prof_dan
一体どうなってるんだ!

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prof_mam
大事に育てていたのに……どうしてこんなことになっちゃったの……。
prof_tantei探偵
お母さん、落ち着いてください。アジアンタムの水やりもお母さんがやっていたんですか?
prof_mam
そうです。このアジアンタムも、お父さんから前に枯れたバラをもらったときに、一緒にプレゼントされたものでした。
prof_tantei探偵
待てよ……。

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prof_tantei探偵
植物をお母さんにプレゼントしたというお父さん……

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prof_tantei探偵
毎日欠かさず水やりをしていたというお母さん……

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prof_tantei探偵
そして、たまに水やりをし、バラには肥料をあげたという娘さん……。

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prof_tantei探偵
!!……わかったぞ! 謎は全て解けた!

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prof_musu
(もう飽きちゃったから漫画でも読も)

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prof_tantei探偵
みなさん、真犯人がわかりました。

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prof_mam
私の大切な植物を枯らしてしまったのは誰なの!? 早く教えてください!
prof_tantei探偵
そもそも、最初に枯れたバラは、香りも素晴らしくて人気のお花ですよね。しかし、ちょっと育てるのが大変な面もあります。乾燥しすぎても枯れてしまうし、常に土が湿っているのもNGです。水やりのタイミングは、バラの葉先が少し下がってきたときなんです。お母さんは、土の状態に関係なく、いつも決まった時間に水をあげていましたね。バラの水やりは、土の表面がしっかりと乾いてから行うことが基本なんです。冬場は1回でもいいかもしれませんが、夏場であれば、朝と夕方の2回必要なこともあります。ですから、決まった時間に水をあげるのではなく、常にバラの状態を見て判断することが肝心なんです。そして、水のかけ方にも重要なポイントが。ジョウロの注ぎ口がシャワー型になっている場合、花や葉に水がかかって、株元まで水がかかってないことが多いんです。なので、ジョウロで水をあげるときは、シャワーになる「ハス口」(ハスグチ)部分を外し、葉をめくって地面にかけるのが大切なんです。

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prof_musu
……へぇ。じゃあ、犯人はいつも水をあげていたお母さん?
prof_tantei探偵
いえ、たしかにお母さんにも原因はあると思いますが、さらにもう一つ重要なことがあります。娘さんは元気がないときに肥料をあげましたね。植物が弱っているときに肥料を与えてしまうと、肥料を吸収できず、「肥料焼け」という症状になって枯れてしまいます
prof_dan
じゃあ、やっぱりうちの娘が犯人か……?
prof_tantei探偵
いえ、肥料をあげるタイミングはよくなかったのですが……本当の犯人は違います。ここで、枯れてしまったアジアンタムを見てください。アジアンタムは観葉植物として人気ですが、乾燥と水不足が原因で、葉が枯れてチリチリになることはよくあるんです。旅行に行っている間に枯れてしまった、というケースも少なくありません。
バラも同じように、こまめに状態を見てあげることがポイントです。水のあげすぎで根腐れを引き起こすこともあるのですが、いずれにせよ、土の状態を見てジャッジすることがポイントになります。バラとアジアンタムそれぞれの土の状態を見ながら、それぞれに水を上げることが大切なのです。それが命を育てるということですから!家に誰もいない時間が多く、植物の様子をしっかり見られないこの家には、元々不向きなんです。となると、そもそも最初にこの家にバラとアジアンタムを買ってきた人物……

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prof_tantei探偵
そう、犯人は……お父さん、あなたです!

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prof_dan
そんな……。バラとアジアンタムを買ってきたことが問題なのは分かったが、チューリップの件はどうやって説明するんだ。球根から育てて、実際に花も咲いたんだから、この家に不向きということもないだろう。

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prof_tantei探偵
きれいなチューリップを咲かせるためには、球根選びから大事になってくるんです。購入時の球根を思い出してください。その球根に、斑点がありませんでしたか?

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prof_tantei探偵
表面に斑点が見られる場合は、すでに病気になっている恐れがあります。そう、お父さんが持って帰ってきた段階から、このチューリップは病気だった可能性があります。

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prof_mam
そんな……。

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prof_tantei探偵
妻のことを思って買った植物たち……。しかし、皮肉なことに、この家には合わなかったんです。こんなに育てにくい植物ばかり買ってきた上に、元から病気だった植物を選んだお父さん……あなたの罪が一番重い。お母さんに世話を任せっきりにして……買ってきただけで満足して、それでいいと思ってるのか!

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prof_mam
あなた……。
prof_dan
……罪のない、何の罪もない植物たちを、殺して、しまっ、た……。

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prof_dan
「植物があれば、家族に喜んでもらえるだろう」という安易な発想をしてしまったために、こんなことに……。

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prof_dan
ああ……。殺すつもりなんて全くなかったんだ。信じてくれ、ただお前たちのためを思って……

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prof_tantei探偵
いいか、あんたのせいで死んでしまった植物がどれだけいると思ってるんだ! どんな理由であったとしても、立派な殺植犯なんだよ……!

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prof_dan
……はい。きちんと罪を償って、植物に対する知識をつけます。これからは、お母さんに任せきりにするのではなく、一緒に植物を大切に育てられるように……。そして、今度こそ、お前たちの笑顔が見られることをー……。
prof_tantei探偵
行きましょう。

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母娘:お父さん……。

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prof_tantei探偵
植物に対する知識がないのであれば、もう少し育てやすい花をチョイスしていたら、こんな悲劇は起こらなかったのかもしれません。

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prof_tantei探偵
植物に対する知識がないことが招いた悲しい事件だ。全く……植物が住まいの雰囲気を良くしてくれる限り、この世に殺植事件は尽きないのかもしれない……。

 

■二度と悲劇を起こさないために……

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探偵:最後に、読者のみなさんに正しい植物の育て方をお教えしましょう。二度とこのような悲劇が起きないために……。

・バラ

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水やりのタイミングは、与える時間帯を気候に合わせて変えるなど工夫しましょう。初心者の場合は、育てやすい品種を選ぶと○。鉢植えならば、クロード モネやアンブリッジ ローズなどがおすすめです。

・アジアンタム

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乾燥に弱く葉が傷みやすい植物です。一度枯れてしまった葉は元に戻らないので、根元から切り取ること。生育期なら、切った株元から葉がどんどん生えてくるので問題ありません。

・チューリップ

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球根を選ぶ際は、重みがあってずっしりしたものを。ツヤがあってふっくらしているものは栄養が詰まっている証拠なので、購入するときはじっくりチェックしましょう。

そのほか、初心者がガーデニングを始めるならば、“一年草”といわれる、適した季節に花を咲かせる草花がオススメ。例えば、パンジーやビオラといったものは比較的育てやすい一年草です。手が出しやすい値段でもあるので、最初に挑戦する植物に適しています。

また今回のように、ライフスタイルも重要になってきます。普段から外出が多い家では、工夫が必要です。土が乾きにくくなる鉢を使うほか、乾燥した状態を好む植物を選ぶなど、ライフスタイルにあった種類を選ぶとよいでしょう。初めてのガーデニングだと、色々と挑戦したくなってしまうものです。しかし、まずは工夫をしながら、自分にあった植物を選ぶところからスタートさせるといいかもしれませんね。

 

モデル:大川竜弥
つぶら
襟川麻衣子
ナリシゲ
監修:杉井志織(園芸研究家)

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