探偵
みなさん、真犯人がわかりました。

母
私の大切な植物を枯らしてしまったのは誰なの!? 早く教えてください!
探偵
そもそも、最初に枯れたバラは、香りも素晴らしくて人気のお花ですよね。しかし、ちょっと育てるのが大変な面もあります。乾燥しすぎても枯れてしまうし、常に土が湿っているのもNGです。水やりのタイミングは、バラの葉先が少し下がってきたときなんです。お母さんは、土の状態に関係なく、いつも決まった時間に水をあげていましたね。バラの水やりは、土の表面がしっかりと乾いてから行うことが基本なんです。冬場は1回でもいいかもしれませんが、夏場であれば、朝と夕方の2回必要なこともあります。ですから、決まった時間に水をあげるのではなく、常にバラの状態を見て判断することが肝心なんです。そして、水のかけ方にも重要なポイントが。ジョウロの注ぎ口がシャワー型になっている場合、花や葉に水がかかって、株元まで水がかかってないことが多いんです。なので、ジョウロで水をあげるときは、シャワーになる「ハス口」(ハスグチ)部分を外し、葉をめくって地面にかけるのが大切なんです。

娘
……へぇ。じゃあ、犯人はいつも水をあげていたお母さん?
探偵
いえ、たしかにお母さんにも原因はあると思いますが、さらにもう一つ重要なことがあります。娘さんは元気がないときに肥料をあげましたね。植物が弱っているときに肥料を与えてしまうと、肥料を吸収できず、「肥料焼け」という症状になって枯れてしまいます。
父
じゃあ、やっぱりうちの娘が犯人か……?
探偵
いえ、肥料をあげるタイミングはよくなかったのですが……本当の犯人は違います。ここで、枯れてしまったアジアンタムを見てください。アジアンタムは観葉植物として人気ですが、乾燥と水不足が原因で、葉が枯れてチリチリになることはよくあるんです。旅行に行っている間に枯れてしまった、というケースも少なくありません。
バラも同じように、こまめに状態を見てあげることがポイントです。水のあげすぎで根腐れを引き起こすこともあるのですが、いずれにせよ、土の状態を見てジャッジすることがポイントになります。バラとアジアンタムそれぞれの土の状態を見ながら、それぞれに水を上げることが大切なのです。それが命を育てるということですから!家に誰もいない時間が多く、植物の様子をしっかり見られないこの家には、元々不向きなんです。となると、そもそも最初にこの家にバラとアジアンタムを買ってきた人物……

探偵
そう、犯人は……お父さん、あなたです!


父
そんな……。バラとアジアンタムを買ってきたことが問題なのは分かったが、チューリップの件はどうやって説明するんだ。球根から育てて、実際に花も咲いたんだから、この家に不向きということもないだろう。

探偵
きれいなチューリップを咲かせるためには、球根選びから大事になってくるんです。購入時の球根を思い出してください。その球根に、斑点がありませんでしたか?


探偵
表面に斑点が見られる場合は、すでに病気になっている恐れがあります。そう、お父さんが持って帰ってきた段階から、このチューリップは病気だった可能性があります。

母
そんな……。

探偵
妻のことを思って買った植物たち……。しかし、皮肉なことに、この家には合わなかったんです。こんなに育てにくい植物ばかり買ってきた上に、元から病気だった植物を選んだお父さん……あなたの罪が一番重い。お母さんに世話を任せっきりにして……買ってきただけで満足して、それでいいと思ってるのか!

母
あなた……。
父
……罪のない、何の罪もない植物たちを、殺して、しまっ、た……。


父
「植物があれば、家族に喜んでもらえるだろう」という安易な発想をしてしまったために、こんなことに……。


父
ああ……。殺すつもりなんて全くなかったんだ。信じてくれ、ただお前たちのためを思って……

探偵
いいか、あんたのせいで死んでしまった植物がどれだけいると思ってるんだ! どんな理由であったとしても、立派な殺植犯なんだよ……!

父
……はい。きちんと罪を償って、植物に対する知識をつけます。これからは、お母さんに任せきりにするのではなく、一緒に植物を大切に育てられるように……。そして、今度こそ、お前たちの笑顔が見られることをー……。
探偵
行きましょう。

母娘:お父さん……。


探偵
植物に対する知識がないのであれば、もう少し育てやすい花をチョイスしていたら、こんな悲劇は起こらなかったのかもしれません。

探偵
植物に対する知識がないことが招いた悲しい事件だ。全く……植物が住まいの雰囲気を良くしてくれる限り、この世に殺植事件は尽きないのかもしれない……。