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おじいちゃんとおばあちゃんが一番しあわせだった日 | 王子で34年間美容室を続けている羽田さんご夫婦
—お二人の一番しあわせだった日を教えてください。
二雄さん
1984年、当時僕は36歳で銀座の美容室に勤めていました。でも、夏に突然そのお店が閉店してしまって、いきなり収入源を失ってしまったんです。そのとき長女は1歳にも満たない赤ちゃんで、妻は妊娠中。なんとか家族を養わなきゃと身の回りの物をすべて売って資金を集め、突然の閉店から2ヵ月後、この場所にお店を開きました。お店のことや家族のこと、自分の中で8割は不安や恐怖でいっぱいでした。でも残りの2割は、どうなるかわからないけど未来だけはずっと広がっていて、僕ががんばればどうにでもできるってワクワクして。あの気持ちは、希望だね。当時はとてもつらかったけど、希望があって、幸せだったね。
和枝さん
私たち夫婦は、二人でこの美容室を営んできました。子どもが3人もいたこともあって、贅沢はできない生活でした。自営業だから休みもなく、子どもと遊ぶこともあまりできなくて。もしかすると、寂しい思いをさせていたかもしれないですね。うちに従業員がいた頃は、子どもの面倒を見てもらったこともありました。保育園の先生も、休みの日なのに預かったりしてくれたんです。だから、うちの子たちはみんなに育ててもらったようなものなの。そうして大きくなった長男が大学を卒業して働き始める前に、いつもは照れくさそうに話す息子が妙に真剣な顔で「お母さん」って私を呼んだんです。そして私の前に正座すると「うちは貧乏なのに、大学まで出してくれてありがとう。がんばります」って言ってくれたの。すっと肩の力が抜けて、嬉しかったな。
—それでは、お店のことやお二人のこと、もう少しお伺いさせてください。まず、お二人の生い立ちは?
二雄さん
僕は高校卒業後、山形から東京に出てきてガソリンスタンドで働いていました。お客さんで来ている美容師の人と話していたら憧れて、働きながら専門学校に通って美容師になったね。それからいろんなお店を転々として、ここに自分のお店を持つようになったよ。
和枝さん
私は千葉県の野田市出身で、洋服店の娘でした。姉がお店を継いでくれたので、私は生命保険会社に勤めました。だけど、美容師に憧れがあって会社を辞めて退職金を使って、美容専門学校へ。卒業後はお店を何店舗か経験して銀座のお店へ行きました。
—お二人が出会ったきっかけはなんですか?
二雄さん
彼女と僕が働いていたお店は系列店でね。僕が働いていた銀座店は日曜が休みだから、彼女の駒形店によく手伝いに行っていたんだよ。
和枝さん
彼は顔がイマイチだったけど、やさしくてね。私が銀座のお店でいじめられているときも助けてくれたの!
二雄さん
当時の彼女は痩せていたから、最初は中学生が入ってきたのかと思ったよ(笑)。
和枝さん
あのとき、この人はパチンコ三昧だったのを私が救ってあげたのよ(笑)。
—一日の業務の流れを教えてください。
二雄さん
うちのお店は9時〜19時まで営業しているから開店の15分くらい前に来て、植木に水をあげたり、掃除をしたりしてお客さんを待っているよ。
和枝さん
お客さんはお年寄りの方が多いこともあって、朝早くからお客さんがバタバタ来ないから、のんびり準備をしているわ。その後、私は晩御飯の支度のために17時頃に帰ります。
二雄さん
僕はその後タオルを洗ったり、掃除をしたり、片付けをして20時頃にお店を出るね。美容組合や環境衛生などいろんな活動しているから、月に3回くらい早めに閉めちゃうこともあるよ。お客さんとは長い付き合いだからそういうワガママも聞いてくれるね!
—お店で意識していることは?
二雄さん
商売だけど全面に出さずに温かい空気を出すように心がけているね。
和枝さん
お年寄りの方って、家だと喋りたくてもあまり話せないみたいで……。ここならずーっと話せるから、2時間半ぐらい話しているときも。それを聞くのも仕事だし、みんながオアシスのように思ってくれるのは嬉しいね。
二雄さん
ここで話しても他の人に流れることもないし、安心してくれるのかな?
和枝さん
誰かが話したことを絶対に他の人に言わないもんね!
—相手の頼りになるところは?
二雄さん
うちの子どもは年子で生まれたからね。ちょうどお店のオープンとも重なっていたのに、世話をしながら家事も仕事もこなしていて、彼女はすごいと思いますよ!
和枝さん
彼はお客さんのウケもいいし、お客さん第一にしているところが尊敬できますね。そのおかげで、今までお店が存続できたんだと思います。あと、周りを大事にしながら、私のことも大事にしてくれます。
—お店を営んでいて嬉しかったことは?
和枝さん
遠くに引っ越した後でも来てくれるお客さんですね。もちろん、別のお店にも行っていると思うけど、それでもまたうちのお店に戻ってきてくれるのはとても嬉しいですね。
二雄さん
あとは、お客さんからの反応がいいとき。「どこで切ってもらったの?」って友だちに聞かれたとか。もちろん僕も嬉しいけど、言われた本人も嬉しいんだと思いますね。
—3人のお子さんとはどんな思い出がありますか?
和枝さん
私たちが土日休みじゃなかったから、全然どこへも連れていってあげられなかったね。
二雄さん
そのかわり、子どもたちが長期休みになったら、目一杯一緒に遊んでいました。
和枝さん
旦那の実家の山形に連れて行って、たくさん遊ぶんです。今思うとそれがあったから、今でも何かあるとすぐ駆けつけてくれるし、関係もうまくいってるのだと思いますね。先月も息子夫婦と伊豆に出かけました。
二雄さん
他の家族からしたらちょっと不思議に思われるらしいけど、家族はワンセットで行動するとずっと考えてきたから、うちの家族ではすごく普通のことなんだよね。
—この街の良いところは?
和枝さん
街の人がやさしいですね。近所の人や元従業員も、うちの子をどこかに連れて行ってくれたりね。今も変わらず仲良しですよ。
二雄さん
古くから住んでる人はお客さんじゃなくても仲が良いんです。おかずを持ってきてくれたりするね。
和枝さん
あと、交通の便がいい。北区はどこに住んでいても20分くらいで駅に行けるところが多いしね。
二雄さん
長生きするなら北区が一番だと思うよ。人情味もあって、交通の便もいいし、近代的なものも増えてきたからね。町並みはだいぶ変わったけど、時代に沿って変わるのはしょうがないことだよね。
—夫婦としてのこれからの夢、やりたいことはありますか?
二雄さん
僕は80歳まで現役で仕事をしたいね。人と関わる今の仕事が好きだから、体力がある限りね。
和枝さん
私も働くことは好きだからやれるだけやっていたいね。長女がまつ毛エクステの仕事をしているから、一階でそのお店を開いて、私たちが手伝いをするとかね。
二雄さん
成人式の日は毎年忙しくて、家族みんなで働いているんです。彼女が着付けをして、僕がヘアセット。長女がメイクをして、長男の嫁が着付け部屋からお店まで誘導する。そういった形で家族みんなで何かできたらいいね。
和枝さん
近くに住んでいる長男がお店を建て直してくれるって言ってたから、早くお願いしないとね。
子どもが小さいときは、近所の人や従業員が羽田さん夫婦を助けてくれて、子どもが大きくなったら、子どもたちが助けてくれる。時代によって街の形は変わっても、変わらずに続いていく関係性は素敵ですね。
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