—お店を営んでいて大変だったことは?
幸雄さん
開店するまでも大変だったけど、開店してから二ヵ月くらいしてからお客さんが急に来なくなっちゃってね…。家賃や借金、生活費もあるからどうしようって頭を抱えていました。
節子さん
私は、そのときはそんなに心配していなかったんですよね。全然わかっていなかったし…(笑)。
幸雄さん
そしたら、お客さんの旦那さんがカメラマンで、雑誌に「隠れた味コーナー」みたいな企画で1ページぐらい取り上げてくれたんだよ!
節子さん
それからは反響がすごくて、デパートの催事で扱いたいという人も!お客さんがたくさん来てくれて嬉しかったですね。
—お客さんとの印象的なエピソードを教えてください。
幸雄さん
だいぶ前になっちゃうけど、とある有名な俳優さんが入院しているときにそのマネージャーさんが来てくれてね。一日の塩分制限があるらしくて、お金はいくらかかってもいいから一番いい肉で塩分の少ないハムを作って欲しいって頼まれて。
節子さん
それから何回かマネージャーさんが来てくれましたね。俳優さんが亡くなったあと、奥様が本に「減塩のハムをありがとうございます」ってサインをくださったんです。
幸雄さん
あのときは、手間がかかる作業だったけど、喜んでくれて嬉しかったですね。

—この街の良いところは?
幸雄さん
開店した頃は、個人のお店や物品販売のお店も多かったから、とても賑やかだったね。生活するにはいい街だと思ったよ。
節子さん
私の実家が工場だったから、周りに木や公園がなかったんです。この街は緑も多いし、綺麗なところだと思いましたね。
幸雄さん
今はコンビニやチェーン店が多くなって街の雰囲気はだいぶ変わったけれど、お客さんは変わらずいい人が多い。心地よい距離感で接してくれるね。
節子さん
子どもが小さいときは商売やりながらだと大変だからって、お客さんが子どもの面倒を見てくれましたね。とても助かりました。
幸雄さん
あとでお礼しようとしても、「お礼はいらない」って言われて。何人もの人に助けてもらったね。

—夫婦としてのこれからの夢、やりたいことはありますか?
幸雄さん
僕たちはお店があったから働き詰めで、できれば娘夫婦にお店は全部任せて、のんびり温泉旅行とかしたいよね。
節子さん
私もお花が好きだから、時間ができたら日本中のお花を追いかけたいな。それこそ、主人と一緒に旅行しながらね。
幸雄さん
娘夫婦たちにはまだ安心してお店を任せられないからね。
節子さん
うん、もうちょっとしたらかな?


昔はコンビニやチェーン店がなく、特色のあるお店がたくさんあって商店街も栄えていたそうです。都市開発が進み、自営業のお店が少なくなってきましたが、お客さんとの絆を大切にする地域密着型のお店を、お二人でこれからも守り続けてほしいですね。
