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【明大前】COLUMN 明大前で江戸時代の面影をたどってみよう

京王線と京王井の頭線が交差する明大前駅。新宿、渋谷という2大ターミナル駅はもちろん、下北沢や吉祥寺へのアクセスも良く、どこに行くにも便利なロケーションにあります。駅周辺に明治大学和泉校舎がそびえ立ち、学生が多い街としても知られる明大前には、知られざる江戸時代の遺構が残されていました。杉並区の郷土史研究家、小島智さんの案内で明大前を歴史散策してみました。


江戸の大動脈、甲州街道に遺されたもの

昭和8年に開通した京王井の頭線。京王井の頭線の上を走る玉川上水の古い鋼管(ツタに覆われた部分)は、明治時代のもの。江戸時代は、素掘り・開渠で流れていました。

明大前の駅を出てすぐ、目の前を横切るのが甲州街道です。甲州街道は江戸幕府によって整備された五街道の一つで、江戸と甲斐国(現在の山梨県)、そして信濃国(現在の長野県、下諏訪)を結んでいました。甲斐国は親藩、または譜代大名を甲府藩主に置き、後には天領として幕府が直轄支配していた要衝で、江戸城陥落の際は将軍が甲斐国・甲府まで避難することを想定して整備されたといいます。

江戸防衛の軍事道路として重要な役割を果たした甲州街道に置かれたのが、塩硝蔵(えんしょうぐら)と呼ばれる鉄砲弾薬の貯蔵庫でした。1750年代に置かれた塩硝蔵の敷地はおよそ62,000㎡、御鉄砲玉薬方同心という役人が昼夜交代で警備や雑用を担っていました。1868年、江戸城は無血開城しますが、塩硝蔵は、西郷軍とは別に甲州街道を上ってきた明治新政府軍に無血接収され、貯えていた弾薬は上野彰義隊討伐や奥州諸藩の平定に使用され、大いに威力を発揮したといいます。

杉並区立郷土博物館所蔵
昭和16年ごろの現在の永福1丁目(明治大学の北側あたり)、神田川の永高橋付近の様子。
甲州街道沿いには塩硝蔵跡地を示す看板が。

「火薬庫前」駅から「明大前」駅へ

かつて山手線外周を走る環状線(第二山手線)建設の計画が持ち上がりました。大井町から駒沢、明大前、中野、板橋、北千住、洲崎を結ぶ壮大な計画は昭和11年に頓挫しましたが、明大前付近においては線路の建設計画が先行着手されました。昭和8年開業の現京王井の頭線の横に、第二山手線用のスペースが今も残されています。

明治の時代になると塩硝蔵は陸軍の管轄に置かれ、和泉新田火薬庫として再開されましたが、大正時代末期の軍縮の動きを受けて廃止が決まり、民間に払い下げられました。その跡地を購入したのが、関東大震災で駿河台校舎が壊滅した明治大学だった、というわけです。現在、塩硝蔵の跡地には明大和泉校舎が立っており、正門の近くに塩硝蔵にまつわる看板が掲げられています。ちなみに、大正2年に開通した京王電気軌道(京王電鉄の前身)は当地に火薬庫前駅を開設しましたが、昭和10年、明大前駅に改称しています。

同じ塩硝蔵の跡地に移転してきたのが、同じく関東大震災で被害を受けた築地本願寺でした。震災後の復興計画に則り、昭和5年にこの地を取得。墓地等を移設し、現在は「和田堀廟所」として知られています。敷地内にある極楽橋は、日本建築史のパイオニアで築地本願寺本堂の設計を手がけた建築家、伊東忠太の手によるもので、当時は廟所前の玉川上水にかけられていたそうです。墓地には作家の樋口一葉ほか、歌人・九条武子、昭和を代表する作曲家の古賀政男、政治家の佐藤栄作ら、有名人の墓があることでも知られています。

なお、和田堀廟所から下高井戸駅入口にかけては寺町があります。和田堀廟所から連なる真教寺、善照寺、浄見寺、法照寺といった寺は浄土真宗(本願寺派)の移転寺で、築地本願寺の移転に伴い、こうした寺町がこの地に形成されたようです。

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和田堀廟所にある、伊東忠太が手がけた極楽橋。
樋口一葉のお墓もひっそりと佇んでいます。

江戸時代の玉川上水路をたどって

玉川上水の上に設けられた玉川上水公園。

江戸時代に整備されたインフラといえば、五街道と上水道。江戸六上水の一つで小石川上水(後の神田上水)の次に整備されたのが玉川上水でした。多摩の羽村から武蔵野台地を通って四谷大木戸(現在の四谷4丁目付近)の水番所を経て江戸市中へ水を供給しており、全長約43kmが1653年に完成しています。

現在、富士見ヶ丘駅南方あたりから下流の水路のほとんどは暗渠となっていてその上には緑道や公園が設けられています。明大前付近では、京王井の頭線と交差するため玉川上水が線路をまたぐ形となっていて、巨大な鋼管が露出している様子を目にすることができ、まさにビューポイント! そのすぐ東には東京都水道局の水圧調整施設(和泉給水所)がありますが、ここはかつて旧玉川上水と、水質浄化のため建設された淀橋浄水場に送水する新水路との分岐点だったとか。明治大学和泉校舎の前にある玉川上水公園にはクジラ、水車など、水との関わりを感じさせる遊具が設えてあります。

かつての玉川上水を模したもの?まるで水道管のようなデザインの手すりも。

なお、さらにその先、代田橋駅付近や笹塚駅付近には一部小川が残っていて、カメの姿を目にすることも。明大前の玉川上水公園から笹塚方面へ、玉川上水の跡をたどって散策してみるのもいいでしょう。

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■施設データ
築地本願寺 和田堀廟所
所在地:東京東京都杉並区永福1-8-1
アクセス:京王線・京王井の頭線明大前駅より徒歩約10分
問合せ:03-3323-0321
開場時間:本堂7時〜16時、墓地7時〜17時、寺務所9時〜16時30分
http://www.wadabori.jp

玉川上水公園
所在地:東京都杉並区和泉2-7-19
アクセス:京王線・京王井の頭線明大前駅より徒歩約5分
問合せ:︎03-3312-2111(杉並区役所)
http://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/kouen/01/izumi/1007087.html

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