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【国分寺】都市と田舎が「目と鼻の先」。新宿から中央特快で3駅、蛍に出会える街

「国分寺は、相当田舎ですよ。」
この街で74年続く老舗鰻店「若松屋」の三代目は笑いながらそう言った。
国分寺の近所にある巨大都市、立川に住む私はその言葉を聞いたとき、正直あまりピンとこなかった。

確かに立川に比べたら規模は小さいけど、それでも充分過ぎるほど大きな駅だし。
何より田園風景が広がる長野県の信州安曇野で育った自分が「田舎」という言葉を聞いて連想する景色がどんなものなのか、国分寺生まれ国分寺育ちの三代目にはわからないだろう。

しかし、彼の言葉をきっかけに、私がこれまで抱いていた国分寺のイメージは180度変わることになったのでした。

【国分寺の基本情報】

駅名:JR中央線・西武鉄道 国分寺線・多摩湖線 「国分寺」
ランドマーク:セレオ国分寺

快速なら新宿までたったの3駅!

国分寺駅があるのは、国分寺市の東。
駅を降りると、街には都心部とは違った東京の西エリアならではのゆったりとした雰囲気が漂います。

都会の喧騒からは離れながらも、中央線の中央特快に乗れば新宿までわずか3駅、22分ほどでアクセス可能。立川や八王子方面にも出ることができ、都心部で働く人のベッドタウンとしてバランスのとれた場所です。

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他にも、西武鉄道国分寺線・多摩湖線という2線の始発駅として、東村山や西武遊園地にもアクセスが可能。乗換駅として毎日多くの人が国分寺駅を利用しています。

便利な駅ビル・穏やかな南口・再開発が進む北口

国分寺駅で降りた人を出迎えてくれるのは、巨大な駅ビル「セレオ国分寺」。
2013年に「エル」から名称を変更して生まれ変わったセレオは、1階から9階までファッション・雑貨・コスメ・食料品・カフェ・レストランなど、さまざまな店舗が展開する商業施設です。
家族連れからビジネスマン・ビジネスウーマン・学生まで、多くの住民が利用しています。

その他にも、国分寺には駅チカに魅力的な商業施設が。
「丸井」をはじめ、2018年に開業したばかりの「ミーツ国分寺」も見逃せないスポットです。

ミーツ国分寺には、スーパーマーケット「クイーンズ伊勢丹」、国内外のラグジュアリーコスメを集めたセレクトショップ「イセタン ミラー メイク&コスメティクス」、「東急ハンズ」などがラインナップし、駅ビルだけで必要なものは全て揃ってしまいます。

つい駅ビルだけで満足してしまいそうになりますが……南口で降りてみましょう。
南口の階段を降りるとそこにはロータリーが広がり、その向こう側に見えるのが国分寺 STEP’S。
チェーン店の居酒屋やファミリーレストラン、スーパーのマルエツなどが入っています。
マルエツは深夜2時まで営業しているので国分寺住民の強い味方。

また、南口にはハンバーガーショップ「THIS IS THE BURGER」や人気ベーカリー「キィニョン」、自然栽培・無農薬・減農薬で育てられた野菜を使った安心安全なメニューを提供する「カフェスロー」など、魅力的な個人店がいくつかあります。

▲「THIS IS THE BURGER」
▲「キィニョン」
▲「カフェスロー」
▲南口からの眺め

続いて、南口を後にして北口の方向に。

静かな雰囲気の南口とは異なり、北口は現在大規模な再開発が進んでいるエリア。
閑散とした駅前にはそびえ立つ高層マンションとクレーン……。
街は変化の真っ最中。
現在の姿からはまだ完成図をイメージできませんが、今後の発展が楽しみな地域です。

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太宰治が愛した老舗鰻店で国分寺の本当の魅力を知る

駅ビル・南口・北口……
それぞれまったく異なる表情をもつエリアをたっぷりと歩き、途中で足を運んだのが、老舗の鰻屋「若松屋」。
作家の太宰治が愛した店として知られる若松屋は、かつて三鷹にあり、太宰氏が手掛けた短編の「メリイクリスマス」の中でも登場します。

休憩がてら鰻を注文し、お店の方に国分寺について聞いてみました。
店主の小川祐二さんは二代目の次男としてここで生まれ、2014年にお父さんが他界してから店を継いたとのこと。生まれも国分寺、育ちも国分寺の方から見て、この街にはどのような魅力があるのでしょうか。

(※以下、「」内は小川さんのセリフです)

――小川さんが二代目として店に立つ以前は何をされていたんでしょうか?
「普通に一般の企業に就職して会社員をしていました。親父が体調を崩してから店を手伝うようになり、鰻のさばき方や焼き方を徹底的に叩き込まれました。」

――太宰治が愛した店として知られているわけですが、店を継ぐうえでプレッシャーは感じなかったですか?
「自分はこの場所で生まれてこの環境が当たり前だと思っていたので、意外とそういうプレッシャーは感じなかったです。子どもの頃から鰻の仕込みとか手伝わされてましたし。でも、鰻って贅沢品じゃないですか。お客さんは特別な時に食べに来てくれたり、会社の接待で使ってくれたり、舌の肥えた人もいらっしゃるので、下手なモノは出せないという思いはありますね。」

――国分寺はどんな街ですか?駅周辺を歩きましたが、再開発が進んでいてすごいですね。
「いや、でも……国分寺は、相当田舎ですよ。うちの方もそうですが、駅から離れるとホントに静かです。夏になると蛍も観られますからね。」

――蛍……ですか?こんな都会に?
「いや、ホントに都会じゃなくて田舎なんですよ。『お鷹の道』って行きましたか?鰻を食べたらぜひ行ってみてください。」

▲大串重(3,500円)

蛍が住む緑豊かな武蔵野の森

絶品の鰻でお腹を満たされた後、三代目に案内された方へ向かってみることに。
しかし、三代目がいう「田舎」とは、一体どんなものなのでしょうか?

この日は4月の上旬。
満開の桜とよく晴れた空、そして、一足早く飾られた鯉のぼりのコントラストを眺めながら西の方に進むと、水路の脇に「ほたるのすむ川」という看板が。

そして、街並みも駅前の雰囲気とは変わり、趣のある古い建物や、大きな一軒家が目立ち始めます。

のどかな風景の中には自宅の一階や蔵を利用したカフェもちらほら。

このあたりは「お鷹の道」と言われる池湧水群。
江戸時代にこの周辺は尾張徳川家の御鷹場に指定されており、それちなんで名付けられたのだそう。
その水の美しさは環境省が選定する名水百選にも選ばれ、東京都の名湧水57選にも入っています。
ハケ※の湧水を水源として、小川に沿って続く小道には四季折々の草花が生息し、夏の夜には蛍が輝きます。

※ハケとは・・・崖地形、丘陵、山地の片岸を指す日本の地形

小道を歩けばどこからともなく聞こえてくる鳥のさえずり。
平日にも関わらず、小さな子どもを連れたママやお年寄り、列になって手を繋ぐ幼稚園の子ども達など、多くの人が行き交いながら、「こんにちわー」と挨拶を交わすその様子に、幼い時に見ていた田舎の原風景が重なります。

無料休憩所兼案内所「史跡の駅 おたカフェ」や群生する花々、野菜の直売所など、出会う景色のひとつひとつが、東京の生活ではなかなかお目にかかれないものばかり。
ゆっくりと散策をしていると、心の底から癒されていきます。

新宿からたった“3駅”。都内有数の清流に心を洗われる

「お鷹の道」を歩き、私が駅前周辺から感じていた国分寺の印象とは全く違った街の一面を知りました。
若松屋三代目の語った言葉の意味が、今はとてもよくわかる。

清流の流れと豊かな緑は、私の育った安曇野の自然のような力強い美しさを感じました。
どれだけ駅前の開発が進んでも、このせせらぎが枯れない限り、国分寺はいつまでも「東京の田舎」であり続けてくれるのでしょう。

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