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今、再注目されているお神輿を、この夏楽しむために知っておくべきこと

江戸のお祭りといったらお神輿ですよね。今、お神輿が再注目されているのを知っていますか?お神輿ってどうしても身内で盛り上がっている印象が強いものですが、今まで近寄りがたかったお神輿を、どうすれば楽しめるのか?全国各地でお神輿を担ぎ、海外にまでお神輿を持って現地の人たちと一緒に担いでいる宮田さんが、その真髄を紹介してくれます。

■お神輿ってそもそも何?

みなさんがお祭りでよく見かけるお神輿には、どんな意味があるか知っていますか?お神輿とは、「神様の輿」つまり乗り物です。神社が神様の家であるとするならば、お神輿は神様の車ということになります。お祭りの日、神様はお神輿にお乗りになり、里を巡ります。

お神輿デザインや作り方なども様々です。

代表的なお神輿の屋根は「てりむくり」と言って、膨らんだ曲線と反った曲線によって作られています。そのバランスにより印象が大きく変わります。

屋根には、神社の紋としては一番多いとされる巴紋(ともえもん)、神社の家紋である神紋(しんもん)特別な神社のお神輿には十六菊花紋(じゅうろくきくかもん)がつけられていたりします。

お神輿のデザインは時代や地域によって大きく変化し、鎌倉あたりの神輿は質実剛健、装飾も派手すぎず極めて丈夫に作られています。

映画『Mikoshi Guy 祭の男』より

湘南では相州神輿と呼ばれ「タンス」と呼ばれる環が両サイドに付き、鳴らして担ぐ「どっこい」という担ぎ方をします。
一方で江戸の神輿は江戸の粋文化を汲み、屋根が大きく胴が細く華奢に作られており、担ぎ方は「江戸前」です。

装飾は極めて緻密、彫刻や餝金物(かざりかなもの)は豪華絢爛、装飾は地域の神社を踏襲していたり地域性が現れている事があります。
その他綱の結び方、色、担ぎ棒の数、形、担ぎ手の衣装など一つ一つ違いや意味があり、じっくりと観察してみるのも一つの楽しみ方です。

 

また、神社には氏子地域、と言うものがあり、一つ一つの神社がお護りする範囲が決まっています。そこに住んでいる人達を「氏子」といい、それに対して神様を「氏神様」といいます。

お祭りの日、元々は一年に一度氏子達が自身の氏神様をお神輿に乗せて担ぎ上げ、地域に力を振り撒き、また氏子達が力を合わせ、思いを寄せることで神様の力を充電するといった意味があります。

宮城県石巻市雄勝町のお神輿

「神は人の敬によりて威を増し、人は神の徳によりて運を添う」は、約800年前、鎌倉時代に作られた御成敗式目に書かれた一文です。人がたくさんの思いを寄せることで力が強くなり、明日からまたより一層の力で見守ってくださる、といった内容です。ここに日本古来の神様と人の関係があると僕は考えています。なぜ氏子が氏神様を担いで街を巡るのか、その理由はここにあるのです。

■お神輿を担ぐにはどうすればよいか

「お神輿を担ぐためにはどうすれば良いのでしょうか?」

これについては、様々な意見と答えがあると考えられます。
地域行事は各場所によって運営の方法がそれぞれ異なるため、お神輿を担ぐ、お祭に参加する、といった方法が全ての地域に一律に当てはまるわけではありません。しかし、例えば自分の住んでいる地域の氏神様であれば、その神社の神職に相談してみるのが良いでしょう。

神職の方は代々神社を守っている方が多く、地域の事情をよく知っています。氏子がお祭に参加したいという要望は、喜んで受け入れてくださるはずです。
誰が神職かわからない、氏神様がどこの神社かわからない、という方は各都道府県の神社庁に電話して、住所を言うと教えてくれます。

お神輿を担ぐ時には様々なローカルルールがあって初めは緊張するかもしれませんが、周りの方々が支えてくれてきっと最高に楽しい1日となりますよ。
僕もそうですが、どんなにたくさんのお祭に参加しても自分自身の氏神様のお神輿は特別です。

地元の氏神様のお祭りにて

■地域とお祭りの関わり(地方と都会のお祭りの違い)

日本全国には様々なお祭りがあり、参加すると地方のお祭と都会のお祭には違いがあることがわかります。

特に、お神輿の担ぎ手が足りない、参加者が減っているといった場合、それぞれ事情が異なります。地方の場合は住民の減少による過疎、都会では社会構造の変化により地域行事に興味を持つ人が減っているからと分析出来ます。

都会のお神輿の場合、たくさんの人がお神輿を担いでいたとしても、実際に氏子である人はほとんどいないことが多いのです。
例えば新宿や渋谷を例にするとわかりやすいですが、どれだけ多くの人が往来していたとしてもそこに代々住んでいる人は、とても少ないことが想像できると思います。

一方、地方のお祭の場合は逆で、代々その地域に住んでいる人たちが主で、移住してくる人や他の地域から祭に参加する文化があまりないので、人口が少なくなってお祭りの参加者が減っています。

地方と都会を比較すると、お祭や神社への関わり方が違うことがわかります。都会ではお祭り好きといえば、お祭りのシーズンになると毎週忙しい様子が見られますが、地方だと毎週のようにお祭りの準備や会合などに赴き、一年に一度のお祭りを今か今かと待ち望んでいる人が多いです。
日本全国どの地域を訪れてもお祭りや伝統を愛し本気で取り組んでいる人がいて、様々な熱い想いを交換できる事は大きな魅力です。

お祭りはたとえ氏子でなくても、その地域にご縁があって、敬意をもって接すれば、こころよく受け入れてくれることが多いと実感しています。復興支援で被災直後から関わりがあった石巻の雄勝町では、それまで部外者には担がせないという暗黙のルールがあったのを、僕たちは初めて担がせてもらえることになりましたし、それから毎年、東京や海外から友人を連れていくという交流が生まれることになったからです。

だからといって、どこの地域のお祭りでも自由に参加できるというわけではありません。地域の人としっかりとした人間関係を築いておく必要があります。特に地方のお祭りはご縁をとても大切にしています。自分のことを責任持って紹介してくれるお祭り関係者に迷惑をかけないようにするのが大前提です。

ご縁ということでお祭りに関するエピソードを紹介すると、
以前雄勝町に連れて行ったことのある友人から、「和歌山県のすさみという町にお祭りに本気で取り組んでいる人がいるから仲良くなれるだろう」ということで、今度は逆に連れていってもらったことがありました。

その方は仕事の関係で普段は他の県に住んでいるのですが、お祭りの練習のために頻繁に帰省していて、実際にお会いしてみると、本当にお祭りへの情熱が強い人だと感じました。
そのときちょうど僕がタイのお祭りでお神輿を一緒に担いだ初老の紳士がそこの町に住んでいることを思い出し、急遽連絡を取って、その方も一緒に4人でお会いすることになりました。

すると、なんとその2人は中学校の生徒と先生という関係だったのです(笑)。
しかも成人してお酒を一緒に飲むのもその時が初めてというくらいに久しぶりの再会。お祭りが繋いでくれるご縁は本当に予想もつかない展開がたくさんあると痛感しています。

そんなご縁があるからこそ、お祭りに参加できるようにもなるわけです。だから、地元のお祭りの窓口になってくれた人に迷惑をかけないように振る舞わないといけないし、そういう信頼関係が地方のお祭りに参加する前提だと考えてもらったほうがいいかもしれません。

和歌山県西牟婁郡すさみ町の地元の人たちと

■海外でもお神輿は大活躍

最近僕はお神輿を海外に持って行って、現地の人と一緒に担いでいます。東日本大震災の支援をしてくれたことをきっかけに、祖父の神輿が南フランスへ渡ったのです。

そこから神輿は様々な国で受け入れられ、フランス、ドイツ、ポーランド、スロベニアで神輿は担がれています。

驚くことに、お神輿が一基あることで各地に人の輪が生まれ、ヨーロッパでもたくさんの豊かなつながりが出来ています。ヨーロッパで初めてお神輿を担いで、日本まで祭に参加しに来るなんて事も。
お神輿は人の心を豊かにし、仲間同士の連帯を強固にしていきます。

今年からEuropean Mikoshi Unionが作られ、国を超えてさらにつながりが広まっていっています。日本人と同じように、自分の故郷でお神輿が上がる日を大切にしてくれる人たちがヨーロッパにいることを誇りに思います。

海外の大学等でのお神輿の解説を学生に向けて

「神輿は一人じゃ上がらない」

祖父が残した言葉です。
お神輿を担ぐと決断したその日から、たくさんの人がそこに関わり、力を合わせて1日を作り上げて行きます。
日本でも、海外でも、様々なところでお神輿を上げて来て、僕は祖父の言葉と同時に「仲間がいれば、必ず神輿は上がる」事を学びました。

人と人とのつながりがあれば、一見不可能だと思えるような事も必ず現実にする事が出来ます。
一年に一度、共にお神輿を担ぎ1日を創り上げた仲間は、僕にとっては生涯の友人です。そうやって何百年も続いて来た伝統は、各地でその土地の人たちの情熱が紡いで来たものです。僕の祖父と、その仲間達、家族、友人、近所の人。たくさんの人が大切に守って来てくれたものを当たり前に大切にし、また次の世代へつなぎたい。

肩から肩へ繋がれてきたお神輿を、この夏担いでみませんか。

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