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【苦楽園】上質なお店・心地よい自然・程よい利便性。「楽園」のような日常を過ごす街

学生時代から数えると、10回引っ越しをしている。

こんなにも引っ越しを繰り返すことになったのは、どの街に住んでも「ここが自分の居場所だ」というしっくり感を持てなかったのが理由。それなりに満足はしながらも、いつも“ここはいずれ出ていく街”だと感じていた。

でも最近、年齢を重ねるにつれて”長く落ち着いて住める場所”を求めるようになってきた。
ただ、どんな場所なら「ここにずっと住みたい」と思えるのか、自分でもわからない。

そんな、「住みたい街」の基準がブレブレだった私に「街取材」のお仕事が突如巡ってきた。
取材を依頼されたのは、兵庫県西宮市にある「苦楽園」。
少し調べてみると高台にある閑静な高級邸宅街らしい。

「もしかしたら、この街が私に住みたい街のヒントを教えてくれるかもしれない」
4月某日、そんな淡い期待を抱きながら、取材地である「苦楽園」に訪れた。

苦楽園の基本情報

駅名:阪急電鉄甲陽線「苦楽園口」
ランドマーク:夙川河川敷緑地(夙川公園)

ゆるやかな時間が流れる苦楽園口駅前

苦楽園の最寄り駅は、阪急電鉄の「苦楽園口駅」。
阪急梅田駅から特急列車で約15分、三宮駅から約10分の『夙川(しゅくがわ)駅』から、阪急甲陽線に乗りかえて一駅の場所にあります。

⇒苦楽園口駅周辺の物件一覧をみる

▲駅のホームは、夙川方面行きと甲陽園行きの2つ。

高級邸宅街というイメージから、近代的で大きな駅を想像していましたが、意外にも苦楽園口駅はこじんまりとしていてレトロな雰囲気。
温泉街の駅のような、のんびりとした雰囲気が印象的です。

駅前のロータリーは、乗降客やタクシー・駅への送り迎えに来た車で賑わっており、年配の方や小さな子どもを連れたママたちの姿も見えました。

苦楽園のある西宮市は、「文教住宅都市宣言」を掲げており、教育環境の充実を図っているのだそう。
まわりの市町村に先駆けて待機児童ゼロ対策などに取り組んでおり、子どもやママが多いのもうなずけます。

▲西宮市立北夙川小学校。この他、エリア内に小中学校が多数。

レトロな雰囲気とママに連れられる子どもたちの姿。
「高級邸宅街」のイメージとは少し異なる親しみやすい空気に、この街に対する親近感がグッと増しました。

上品さと親しみやすさが共存する「苦楽園の暮らしの中心」

▲苦楽園口通り入り口。コンビニ・定食屋さん・居酒屋・バー・カフェ・書店・銀行・病院などの施設が揃う苦楽園の「暮らしの中心」

まずは、この街のメインストリート、駅の西側にある「苦楽園口通り」を散策してみました。

苦楽園口通りに入り、最初に目を引くのがこちらの緑の看板。
ここは季節の果物を扱っている果物専門店で、フルーツパーラーとしても営業しています。
フルーツジュースやパフェが人気の様子。

そしてこちらは、スタイリッシュな風貌がひときわ目を引く精肉店。
扱っているのは牧草牛や放牧豚など、安全で良質なお肉のみ。
レストランとしても営業していて、新鮮なお肉を使ったサンドイッチやステーキなどが食べられ、地元でも評判とのこと。

▲いかり夙川店の外観

駅から100メートルほど進み、交差点を左に曲がったところには、旬の食材やオリジナル食材・輸入食品を扱う「いかり夙川店」が。暮らしに便利なのはもちろん、「ちょっといいモノ」を手軽に揃えられるのが魅力的です。

▲八百屋さんの外観

また、通りから一歩入った小道には、昔ながらの対面販売の八百屋さんも。
旬の野菜や果物・鉢花が良心的な価格で並んでおり、店の奥ではお店の方と常連さんと思しき女性が世間話を楽しんでいます。

高級邸宅街と聞くと、人と人のつながりが少し薄いイメージがあったのですが、苦楽園には温かみのある人情も息づいているよう。

「質の良い上品さと親しみやすさ」
苦楽園口通りを散策しながら、そんなこの街の魅力の片鱗が伝わってきました。

▲苦楽園駅周辺にはスーパーやドラッグストアが点在。日常の買い物は、駅周辺エリアだけで完結できる。専門診療を行うクリニックの他、接骨院やマッサージ店・エステといった美容健康に関連する施設も多い

街全体が「楽園」。日常を心地よく包む苦楽園の自然

苦楽園口を通り過ぎ、住宅街を歩いてみると、そこかしこに自然が点在していることに気づきます。
道沿いには街路樹の緑があふれ、個人宅の植え込みや玄関先にも花や植物が咲き乱れています。
普通の道さえも、街路樹や街角の花や緑のおかげで心地よい。

街なかの自然だけでなく、緑あふれる美しい公園も苦楽園の魅力。
なかでも私が心惹かれたのは、夙川公園でした。

▲夙川公園の桜

夙川と平行するようにある夙川公園(夙川河川敷緑地)は、「さくら名所100選の地」にも選ばれた桜の名所。

夙川沿いに約4kmにわたって桜並木が続いており、春には満開の桜を見に多くの方が訪れます。
私が訪れた平日の午前中にも、ちらほらと花見を楽しむ地元の方々がいました。

ウォーキングをする人やお弁当を食べる人――
川岸に座って読書をする人――
特に何をするでもなくボーッとしている人――

などなど、それぞれがのんびりとした時間を過ごしているのが印象的。
休日の混雑を避け、ゆっくりと花見を楽しむのは、この街に住む特権といえるのかもしれません。

ちなみに、夙川公園では毎年初夏と冬の年2回キャンドルナイトを開催しています。
桜の季節とはまたちがった幻想的な光景が楽しめ、地元住民や観光客に大人気とのこと。
そんな一年を通して楽しめる夙川公園は、苦楽園住民の憩いの場です。

また、夙川公園とは反対側、山側にも苦楽園ならではの魅力が。
駅から山側に進み、バス停「苦楽園麓」から坂道を歩くこと約15分。
坂道の頂上付近で開けた場所を見つけて街を見下ろすと、周囲を一望できる美しい景色が広がります。

「苦楽園」という地名の語源には、「このエリアに頻出する坂道の『苦』とその先で拝める絶景の『楽園』をかけ合わせたものという説があるそう。
このパノラマビューを見れば、「楽園」の方はたしかに納得。

▲坂道沿いの満開の桜。山側にも、訪れる人を飽きさせない景観が

街なかに点在する豊かな自然――
川沿いに咲き乱れる桜と楽園のような眺望――

日常の生活圏内にこれだけ豊かな魅力が詰まった街は、なかなか見当たりません。
「ここに住みたい……」
山側からの眺望を眺めながら、とても素直にそう感じている自分がいました。

⇒苦楽園口駅周辺の物件一覧をみる

▲山側の住宅街を歩いているときに見つけた、デザイナーズの商品が揃うセレクトショップやオーガニック志向の飲食店。見ているだけで楽しいお店が多いのも苦楽園の魅力。

「最初はなんとなく選んだのですが、恐らくこの街から離れることはないと思います」

半日ほど街を歩き、この街の魅力をたっぷりと体感できました。
取材の最後に、この街をよく知る人に話を聞くことに。
苦楽園の人気寿司店「鮨千」の大将・千崎さんに、「苦楽園の暮らし」について話を聞きました。

――苦楽園を選んだのはなぜだったのでしょうか?
「実は最初から苦楽園で店をやろうと思っていたわけではないんです。芦屋周辺で場所を探していて、最終的に行き着いたのがここでした。この街に決めた決定的な要素はなくて、『なんとなく』というのが素直な意見です(笑)。」

――実際に苦楽園でお店を開いてみてどうでしたか?
「(苦楽園口は)住んだこともなければ知り合いも一人もいない土地でしたが、開店から13年が経った今ではこの街を選んでよかったと思っています。お客様はこの街に住んでいる方がほとんどですが、心を込めて対応すればそれにちゃんと応えてくださる方ばかりです。人の誠実さ・温かさというのはこの街の魅力のひとつだと思います。」

――開店からずっとお住まいも苦楽園とのことですが、この街の暮らしはいかがですか?
「自然が多くて静かで住みやすい街です。桜の季節はどこを歩いてもきれいですし。治安もいいので安心して暮らせます。」

――ずっとこの街に住み続けたいと思いますか?
「大阪のミナミなんかに比べたら、利便性では劣っているかもしれません。でも質の良いお店やおもしろいお店がたくさんあるし、少し車で走れば西宮ガーデンズ(大型ショッピングモール)や芦屋駅前にも行けます。日常生活で不便をしたことはないですし、人が優しい。自然も豊かで、この街ならではの個性もあります。最初はなんとなく選んだのですが、恐らくこの街から離れることはないでしょうね。」

気分のスイッチを上手に切り替えられる街。

「ここにずっと住みたいと思える街」ってなんだろう?
私が抱いていた疑問の答えが、苦楽園で過ごすうちに少しわかってきた。

それは、仕事や子育てに追われる毎日のなかで、「気持ちのスイッチを切り替えられる場所があるかどうか」ということ。苦楽園は、そんな「スイッチを切り替えられる場所」がどこよりも豊富な街。

のんびり過ごせるオシャレなお店――
川沿いの豊かな自然――
街なかに佇むブティック――
街を見下ろす楽園のような眺望――

苦楽園には、自分の好みに合わせて、少しの時間で気分を切り替えられる場所が揃っている。
どの街でも“長く落ち着いて住める場所”には、必ず苦楽園のような「スイッチを切り替えられる場所」があるのだろう。

ある程度の利便性は必要不可欠。
でも、利便性に偏って街を選ぶと、その街に長く住むことはできない。

「次は必ず街に何度か訪れて、『スイッチを切り替えられる場所」があるかどうか確認してから引っ越そう」
11回目の引っ越しに思いを馳せながら、苦楽園を後にした。

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