「三井の賃貸」プロの現場。 | マンションの大規模修繕において確認申請は必要か?

マンションの新築や増改築工事を行うときには、工事を開始する前に建築確認申請を提出しているはずです。しかし、新築や改築ではなく大規模修繕を行なう際には確認申請は必要になるのでしょうか。
マンションの大規模修繕工事と建築確認申請の関係について、ご紹介します。

1.大規模修繕と建築確認申請について
■建築確認申請とは
建物を新築、もしくは増改築を行なうときは、工事を始める前にその計画が建築基準法や消防法などの建築基準規定に適合するものであるかどうかの確認を申請しなければなりません。
これを建築確認申請といいます。
建築確認申請では、建築主、もしくは代理人として指定された設計者が建築主事や民間の指定確認検査機関に申請を提出し、建築確認済証が交付されます。

■建築基準法上、大規模修繕にも確認申請が必要
建築基準法の第六条では、以下の第一号から第四号までに該当する建築工事を行なう際には、建築確認申請が必要であることが示されています。

第一号 学校、体育館、病院、百貨店、旅館、共同住宅等に利用する特殊建造物で、その用途に利用する部分の床面積が100㎡を超えるもの
第二号 木造の建築物で三階建て以上、または延べ面積が500㎡、高さが13mもしくは軒の高さが9mを超えるもの
第三号 木造以外の建築物で二階建て以上、または延べ面積が200㎡超えるもの
第四号 上記の第一号から第三号までに関わる建築物のほか、都市計画区域や準都市計画区域、もしくは景観法等で定められた区域内における建築物

そして、これらの建築物の大規模修繕、もしくは大規模な模様替えをする場合も建築確認申請が必要であると記されています。

2.確認申請を必要とする工事の種類   
■建築基準法における大規模修繕工事の定義
建築基準法では、マンションの大規模修繕工事についても確認申請が必要であることが示されていましたが、すべての大規模修繕工事において確認申請が必要なわけではありません。
建築基準法では、修繕とは「経年劣化した部分を以前と同じ状態に保つために行なう原状回復を図るもの」と定義されています。そして、確認申請が必要な大規模な修繕とは、修繕する建築物の部分のうち、工事範囲が主要構造部(壁、柱、 床、はり、屋根、階段)の一種以上を過半にわたり修繕することとされています。

■建築基準法における大規模模様替えの定義
建築基準法において、確認申請が必要とされるのは大規模修繕だけでなく、大規模な模様替え(リノベーション工事)も対象とされています。
そもそも模様替えとは、原状回復を目的とせずに建物の構造や規模、機能を変えることのない範囲で改造を行ない、性能の向上を図ることと定義されています。そして、確認申請が必要となる大規模模様替えの範囲は、模様替えをする建築物の部分のうち、主要構造部(壁、柱、 床、はり、屋根、階段)の一種以上を過半にわたり模様替えをする場合とされています。

■確認申請が必要な大規模修繕と大規模模様替え
マンションの大規模修繕や大規模模様替えの工事は、主要構造部として指定されている壁、柱、床、はり、屋根、階段のどこかを半分以上修繕したり、模様替えをしたりする際に、確認申請が必要となります。また、エレベーターや立体駐車場などの新設もしくは増設を行なう場合にも、確認申請は必要となります。

3.一般的なマンションの大規模修繕では確認申請は不要
マンションの大規模修繕や大規模模様替えの際、建築確認申請が必要となるケースは、主要構造部のいずれか一か所以上において、過半にわたり工事をする場合です。一般的なマンションの大規模修繕で行う、外壁や屋根の塗り替え、外壁タイルの張替えなどは、外壁の仕上げを修繕するだけのものとみなされ、主要構造部である壁や屋根そのものの改修工事ではないと捉えられます。
また、屋上や廊下における防水シートなどの修繕工事、屋根材の葺き替えなどの修繕工事も工事範囲は表面の仕上げを変更するのみで、下地までを改修するものではないため、主要構造部の修繕工事ではないとされています。そのため、外壁をすべて塗り替えたケース、屋上の全面に防水工事を行ったケースなどは主要構造部の過半以上を変更するものではなく、確認申請をする必要はありません。
つまり、マンションにおける一般的な大規模修繕工事では、確認申請は不要であるといえます。

4.まとめ
建築基準法では、マンションの大規模な修繕工事や模様替えを行う際には、確認申請が必要であるとされています。

しかし、すべての大規模修繕工事に確認申請が求められているわけではなく、主要構造部として示されている壁、柱、床、はり、屋根、階段のどこか1つ以上を過半にわたり改修する場合に確認申請が必要となります。なお、表面上の仕上げのみを行なう場合は、確認申請は不要となりますので、一般的なマンションの大規模修繕工事であれば、確認申請は不要なケースがほとんどだといえます。

ただし、工事の内容によっては判断基準が異なり、確認申請が必要な場合もあるため大規模修繕を行なう際には、専門家や地域の建築主事に相談をしておくと安心です。
以上

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