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「三井の賃貸」プロの現場。 | 不動産業界でのテクノロジー活用について
1.不動産業界でのテクノロジー活用について
皆さんは「不動産業界」と聞いて、どのような業界だと想像するでしょうか。
いわゆるIT業界に代表されるように、次々と生まれる新しいテクノロジーや仕組みを最先端で活用している業界というイメージはあまりないかもしれません。どちらかというと、「不動産業界」と聞けば、「昔ながらの営業手法が多く、テクノロジー化が進んでいない業界」とイメージされる方も少なくないのではないでしょうか。
日本の不動産業界の市場規模は、40兆円ともいわれており(出典:財務総合政策研究所「法人企業統計調査」)、賃貸住宅分野の規模としても、借家総数は1,907万戸、月の平均家賃は約5.6万円という数値ですので(出典:平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計)、それらを掛け合わせるとほぼ1兆円程度になり、年換算するとおよそ12兆円程度と考えられる非常に大きな市場だといえます。
それではなぜ、そのような大きな市場であるにも関わらず、利便性が上がるようなIT活用が進んでいないのでしょうか。
今回は賃貸不動産業界に限定して考えてみます。
3.賃貸不動産市場の特殊性
賃貸不動産業界が他業界と比べてテクノロジー導入が進みにくい事を考えるとき、その理由の一つとして「不動産市場の特殊性」があると考えられます。
不動産市場の特殊性として、以下3点を順番にご説明します。
① 契約(購入)頻度の少なさ
賃貸不動産の契約については、ご自身で経験された事がある方も多いと思いますが、これまでに賃貸住宅を借りた回数を覚えておられるでしょうか。すぐには回答できなくても、ほぼ正確にその数が分かる方も多いのではないでしょうか。
賃貸住宅に限らず分譲住宅の購入も含めて、不動産はカスタマー(消費者)が日々接するものではなく、人生で何度も契約(購入)するものではありません(もちろん個人によって大きく異なり、かなりの回数の転居を繰り返されている方も多くいらっしゃいます)。
例えば、旅行のためにホテルを予約する際、移動のための交通機関(電車、飛行機等)を予約する際等、スマホやPCからインターネットで空き状況を確認して予約まで完了することができます。飲食店の場合で考えても同様に、スマホだけで空き状況確認から予約まで完了できます。
それに対して、一般的に賃貸物件を探すときには不動産会社に問合せをしない限り最新情報はわからないでしょう。まずは自分で物件を探す→良さそうな物件があれば不動産会社に問い合わせる→まだ契約可能な状態と分かれば不動産会社に訪問する→内見する→契約手続きを進める→契約締結、そこまで完了してやっと引っ越しの段にたどり着けますが、最初に物件探しを始めてから引っ越しが完了するまでには数週間~数ヶ月かかることも充分に考えられます。
このような状況の改善にIT化のニーズはもちろんありますが、借りる人は一度物件を決めてしまえばしばらくは物件を探す機会・転居する機会が訪れないため「我慢してしまう」「我慢できてしまう」場合が多いというのが実態ではないでしょうか。
そして新しいテクノロジーを活用したサービスが生まれるのは、先に述べた旅行業界や飲食業界に限らず「カスタマー(消費者)のメリットにフォーカス」している場合が多いです。しかし、不動産業界においては、カスタマーのメリットだけではなく、不動産会社へのメリットがない限りシステム・サービスの導入が進みません。なぜなら、カスタマーが便利にならずとも、カスタマーは「我慢してしまう」のが現状といえますし、それが業界全体のスタンダートともなればカスタマー側もそれを受け入れる他なく、そうなると不動産会社がメリットのないテクノロジー化にコストをかける必要性が薄くなってしまうのです。
② 仲介会社の数の多さ
賃貸不動産業界においては、マーケットの特徴ともいえますが不動産会社が全国に十数万店舗あるともいわれています(諸説あり正確な数は分かりません)。例えばコンビニエンスストアは6万店舗を下回るくらいの数ですので(出典:JFAコンビニエンスストア統計調査月報(2020年3月度))、それがいかに多い店舗数かお分かりいただけるのではないでしょうか。
また、賃貸不動産業界は数社がマーケットの大半を占めるような寡占市場ではないのも特徴で、1~数店舗を経営される中小規模の法人がとても多いのです。ここでもコンビニエンスストアを例として考えますと、こちらは大手3社がかなりの割合を占めていますので、その点でも大きく異なる市場といえます。
中小規模の法人が多いとどうなるかというと、「新しい便利なサービスを提供したい」となっても、それこそとてつもない数の法人に導入してもらわなければならないわけで、サービスを市場全体に浸透させるのは容易ではありません。導入する側からしても、市場に浸透していないサービスでかつ導入コストもかかるとなると、おいそれと導入判断をすることはできないというのもよく分かります。これが逆に大手数社が寡占しているような市場であれば、大手のうちの数社あるいは1社だけでも導入が進めば自ずと市場に浸透できるということになりますし、カスタマーにもサービスが提供される機会が確保されることになりえます。そうして、便利なサービスであるというカスタマー評価が定着すれば他社も市場競争に勝つために導入を進める、という可能性も出てくるでしょう。
さらには、上述した契約(購入)頻度の少なさもあり、市場占有率が低い新サービスとなるとカスタマーの目に触れる機会も必然的に低くなってしまいますし、もしそのサービスを高く評価したカスタマーがいたとしても、次にまた利用する機会というのはなかなか訪れませんので市場に認知される・浸透するという状況になり難いというわけです。
③ 商習慣やエリア特性
皆さんは賃貸住宅を探す時にまずはどのようにして物件探しを始めるでしょうか。また、気に入った物件が見つかったとして、契約手続きをどのように進めていけばよいかを具体的にイメージできるでしょうか。おそらくは、「問合せ先に記載されている仲介会社にとりあえず連絡すれば内見の案内もしてくれるはずだし、必要な手続きも教えてくれるだろう」という目論見で進める方も多いと思われます。
やはりここでも「頻度の少なさ」という観点から、物件探しから最後の契約まで慣れている方は少数派といえますし、不動産には礼金や敷金といった独特な商慣習がいくつもありますので、特に初めて物件探しをする方にとってはハードルが高く感じられるのではないでしょうか。また、家賃についても関東圏とその他のエリアで大きく異なり、特に東京都心ではその傾向が顕著です。もちろん住みたい街や予算が重要視されるでしょうが、果たして予算内でどのエリアに住めるのか、どのような間取りや設備のマンションに住めるのか、築年数は、駅からの徒歩分数は、という様々なことを加味しながらの物件探しとなるでしょうから、自分で探すだけではなく仲介会社の担当者に聞きながら進めることも多いのではないでしょうか。
そのような場合に、多少なりとも手続きが不便であったり、時間がかかってしまったとしても「今回だけだから」「そもそもどういうサービスがあるか分からない」「そういうものだからしょうがない」と我慢できてしまう人が多いという側面も新しいサービスがなかなか生まれない一因になっていると考えられます。
しかし、不動産業界においても新型コロナウイルスの影響で、これまでの旧態依然とした商習慣に変化が起きつつあります。これまでカスタマーの感じていた「多少の不便」を減らしていけるよう、現在当社でもデジタル化・テクノロジー活用に注力しております。
皆さんは「不動産業界」と聞いて、どのような業界だと想像するでしょうか。
いわゆるIT業界に代表されるように、次々と生まれる新しいテクノロジーや仕組みを最先端で活用している業界というイメージはあまりないかもしれません。どちらかというと、「不動産業界」と聞けば、「昔ながらの営業手法が多く、テクノロジー化が進んでいない業界」とイメージされる方も少なくないのではないでしょうか。
日本の不動産業界の市場規模は、40兆円ともいわれており(出典:財務総合政策研究所「法人企業統計調査」)、賃貸住宅分野の規模としても、借家総数は1,907万戸、月の平均家賃は約5.6万円という数値ですので(出典:平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計)、それらを掛け合わせるとほぼ1兆円程度になり、年換算するとおよそ12兆円程度と考えられる非常に大きな市場だといえます。
それではなぜ、そのような大きな市場であるにも関わらず、利便性が上がるようなIT活用が進んでいないのでしょうか。
今回は賃貸不動産業界に限定して考えてみます。
賃貸不動産業界が他業界と比べてテクノロジー導入が進みにくい事を考えるとき、その理由の一つとして「不動産市場の特殊性」があると考えられます。
不動産市場の特殊性として、以下3点を順番にご説明します。
① 契約(購入)頻度の少なさ
賃貸不動産の契約については、ご自身で経験された事がある方も多いと思いますが、これまでに賃貸住宅を借りた回数を覚えておられるでしょうか。すぐには回答できなくても、ほぼ正確にその数が分かる方も多いのではないでしょうか。
賃貸住宅に限らず分譲住宅の購入も含めて、不動産はカスタマー(消費者)が日々接するものではなく、人生で何度も契約(購入)するものではありません(もちろん個人によって大きく異なり、かなりの回数の転居を繰り返されている方も多くいらっしゃいます)。
例えば、旅行のためにホテルを予約する際、移動のための交通機関(電車、飛行機等)を予約する際等、スマホやPCからインターネットで空き状況を確認して予約まで完了することができます。飲食店の場合で考えても同様に、スマホだけで空き状況確認から予約まで完了できます。
それに対して、一般的に賃貸物件を探すときには不動産会社に問合せをしない限り最新情報はわからないでしょう。まずは自分で物件を探す→良さそうな物件があれば不動産会社に問い合わせる→まだ契約可能な状態と分かれば不動産会社に訪問する→内見する→契約手続きを進める→契約締結、そこまで完了してやっと引っ越しの段にたどり着けますが、最初に物件探しを始めてから引っ越しが完了するまでには数週間~数ヶ月かかることも充分に考えられます。
このような状況の改善にIT化のニーズはもちろんありますが、借りる人は一度物件を決めてしまえばしばらくは物件を探す機会・転居する機会が訪れないため「我慢してしまう」「我慢できてしまう」場合が多いというのが実態ではないでしょうか。
そして新しいテクノロジーを活用したサービスが生まれるのは、先に述べた旅行業界や飲食業界に限らず「カスタマー(消費者)のメリットにフォーカス」している場合が多いです。しかし、不動産業界においては、カスタマーのメリットだけではなく、不動産会社へのメリットがない限りシステム・サービスの導入が進みません。なぜなら、カスタマーが便利にならずとも、カスタマーは「我慢してしまう」のが現状といえますし、それが業界全体のスタンダートともなればカスタマー側もそれを受け入れる他なく、そうなると不動産会社がメリットのないテクノロジー化にコストをかける必要性が薄くなってしまうのです。
② 仲介会社の数の多さ
賃貸不動産業界においては、マーケットの特徴ともいえますが不動産会社が全国に十数万店舗あるともいわれています(諸説あり正確な数は分かりません)。例えばコンビニエンスストアは6万店舗を下回るくらいの数ですので(出典:JFAコンビニエンスストア統計調査月報(2020年3月度))、それがいかに多い店舗数かお分かりいただけるのではないでしょうか。
また、賃貸不動産業界は数社がマーケットの大半を占めるような寡占市場ではないのも特徴で、1~数店舗を経営される中小規模の法人がとても多いのです。ここでもコンビニエンスストアを例として考えますと、こちらは大手3社がかなりの割合を占めていますので、その点でも大きく異なる市場といえます。
中小規模の法人が多いとどうなるかというと、「新しい便利なサービスを提供したい」となっても、それこそとてつもない数の法人に導入してもらわなければならないわけで、サービスを市場全体に浸透させるのは容易ではありません。導入する側からしても、市場に浸透していないサービスでかつ導入コストもかかるとなると、おいそれと導入判断をすることはできないというのもよく分かります。これが逆に大手数社が寡占しているような市場であれば、大手のうちの数社あるいは1社だけでも導入が進めば自ずと市場に浸透できるということになりますし、カスタマーにもサービスが提供される機会が確保されることになりえます。そうして、便利なサービスであるというカスタマー評価が定着すれば他社も市場競争に勝つために導入を進める、という可能性も出てくるでしょう。
さらには、上述した契約(購入)頻度の少なさもあり、市場占有率が低い新サービスとなるとカスタマーの目に触れる機会も必然的に低くなってしまいますし、もしそのサービスを高く評価したカスタマーがいたとしても、次にまた利用する機会というのはなかなか訪れませんので市場に認知される・浸透するという状況になり難いというわけです。
③ 商習慣やエリア特性
皆さんは賃貸住宅を探す時にまずはどのようにして物件探しを始めるでしょうか。また、気に入った物件が見つかったとして、契約手続きをどのように進めていけばよいかを具体的にイメージできるでしょうか。おそらくは、「問合せ先に記載されている仲介会社にとりあえず連絡すれば内見の案内もしてくれるはずだし、必要な手続きも教えてくれるだろう」という目論見で進める方も多いと思われます。
やはりここでも「頻度の少なさ」という観点から、物件探しから最後の契約まで慣れている方は少数派といえますし、不動産には礼金や敷金といった独特な商慣習がいくつもありますので、特に初めて物件探しをする方にとってはハードルが高く感じられるのではないでしょうか。また、家賃についても関東圏とその他のエリアで大きく異なり、特に東京都心ではその傾向が顕著です。もちろん住みたい街や予算が重要視されるでしょうが、果たして予算内でどのエリアに住めるのか、どのような間取りや設備のマンションに住めるのか、築年数は、駅からの徒歩分数は、という様々なことを加味しながらの物件探しとなるでしょうから、自分で探すだけではなく仲介会社の担当者に聞きながら進めることも多いのではないでしょうか。
そのような場合に、多少なりとも手続きが不便であったり、時間がかかってしまったとしても「今回だけだから」「そもそもどういうサービスがあるか分からない」「そういうものだからしょうがない」と我慢できてしまう人が多いという側面も新しいサービスがなかなか生まれない一因になっていると考えられます。
しかし、不動産業界においても新型コロナウイルスの影響で、これまでの旧態依然とした商習慣に変化が起きつつあります。これまでカスタマーの感じていた「多少の不便」を減らしていけるよう、現在当社でもデジタル化・テクノロジー活用に注力しております。
以上
更新日:2020年6月11日
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