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【桜新町】サザエさんに描かれた「東京の普通の暮らし」がここにある

「日本で一番有名な家族」と聞いて、あなたは誰を思い浮かべますか?

私がイメージするのは、漫画「サザエさん」でおなじみの磯野家です。

三世代が一緒に暮らす居住形態は、戦後の日本の家族を象徴するひとつの形。そんな磯野家が住んでいるのが、「東京都世田谷区桜新町あさひが丘3丁目」です。

「あさひが丘」という住所こそ架空のものですが、世田谷には実際に「桜新町」という駅が存在するのです。国民的漫画の舞台になっているにも関わらず、駅名としては沿線の三軒茶屋や駒沢大学、二子玉川に比べると知名度が低い桜新町。

今回はそんな桜新町を実際に歩いてきました。果たしてサザエさんの面影には出会えるのでしょうか?

【桜新町の基本情報】

駅名: 東急電鉄 田園都市線「桜新町」
ランドマーク:長谷川町子美術館

■渋谷まで電車で9分。カーライフも快適

まずは基本的なアクセス情報をチェックしてみましょう。最寄駅は東急電鉄田園都市線の「桜新町」駅。ここからは渋谷までたったの4駅、わずか9分で出ることができます。また、渋谷から東京メトロの半蔵門線と相互直通しているため、表参道や大手町にも乗り換えなしでアクセスが可能。

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サザエさんの物語の中でも、たびたび家族で街に出かけ、デパートで買い物を楽しむシーンが登場しますが、あれはもしかすると電車に乗って渋谷や三越前に足を運んでいたのかも……?

▲バスに乗れば二子玉川方面や目黒、成城学園にも出られます

公共の交通機関も充実していますが、国道246号線が近くを走る桜新町は、車での移動がとにかく便利。

▲国道246号線から環七通りや環八通りを経由すれば、都心や郊外にもスムーズにアクセスできます

磯野家に車はなく、マスオさんはおそらく電車派だった(?)と思いますが、街を歩いていると高級な外車もちらほら。

快適なカーライフを送っている人も多いようです。

■街のあちこちにサザエさん。漫画に登場する”あの場所”も実在

田園都市線の桜新町駅を降りると、出口では早速銅像になった磯野家のキャラクターが迎えてくれます。

▲おなじみの波平さん、カツオくん、ワカメちゃん、フネさん。こんなに可愛らしい銅像、初めて見ました

桜新町は、サザエさんの作者である長谷川町子さんが生前暮らしていた街。長谷川さんは自分が住む街の雰囲気をそのまま作品の中に投影していました。サザエさんに登場する磯野家御用達の酒屋「三河屋」は数年前まで実在していたのだそう。

▲駅からほど近い場所にある「桜町不動産」は、カツオくんの同級生である花沢さんの実家として描かれている「花沢不動産」のモデル。入り口でははっぴを着た花沢さんとお父さんのパネルが出迎えてくれます

サザエさんのテーマソングが流れる商店街を奥に進むと、突き当たりの先に「長谷川町子美術館」が見えてきます。ここは桜新町のランドマーク的な存在です。

▲長谷川町子美術館には長谷川町子さんと姉の毬子さんが生前集めた美術品や、漫画の原画、磯野家の間取りのミニチュアなど、多くの品が展示されています

そして、桜新町を歩けば、サザエさんのキャラクターたちがあちらにも、こちらにも……。

▲歩道に立つポールにもサザエさん
▲一見普通の飲食店も、シャッターを下ろせばそこにはサザエさん一家の姿が
▲こちらはサザエさんの公式カフェ「Lien de SAZAESAN(リアン・ドゥ・サザエさん)」。サザエさんや波平さん、タマの顔をかたどった「サザエさん焼き」が店の名物です

日本人なら誰もが知っている漫画の中の有名人が街並みに自然と溶け込んでいて、なんだか不思議。サザエさんたちの存在を身近に感じ、ほっこりとした気持ちになります。

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■落ち着きのある商店街が街の魅力

そんなサザエさんの街に住む人たちの生活を支えるのが、桜新町商店街。その前身となる「桜新町商店会」の組合は、今から70年近く前の1951年に設立され、長い歴史を持ちます。

主に2本の通りに店が集中していて、そのうちの1本が東京都道427号(瀬田貫井線)添いにあり、スーパーやクリニック・レンタルビデオショップ・そのほか新旧さまざまな店が立ち並んでいます。

▲先ほどの「桜町不動産」もこの東京都道427号沿いにあります。1969年まではここに路面電車「東急玉川線」が走っていたのだそう。道の両側の桜並木は「桜新町」という名前の由来にもなりました
▲こちらは老舗の「レストランデミ」。ハンバーグやタンシチューなど、昔ながらの洋食がいただけます
▲「タケノとおはぎ」は、2016年にオープンした人気のおはぎ専門店。定番のこしあんと粒あんに加え、レモンとココナツ、くりとラム酒、麻の実ときなこなど、目にも美しい創作おはぎが揃う人気店です

そして、東京都道427号とT字で交わり、南の方に伸びるのがもう1本の通り、その名も「サザエさん通り」です。

▲サザエさん通りにはお蕎麦屋さんや洋菓子店、バーなど、行きつけにしたくなる素敵なお店が満載
▲1951年に創業し、家族三世代にわたって続く老舗パン屋「フジヤ」。サザエさん通りの本店と駅前店の2店舗を展開しています
▲フジヤの人気メニューは「サザエさんあんぱん」。ふっくらと焼きあがったパン生地にはサザエさんのご機嫌な笑い顔が焼印されています

商店街はどちらの通りも綺麗で落ち着いた雰囲気。雑多な印象ではなく、品の良さが漂います。また、春には「さくらまつり」、夏には「親和会こどもまつり&サザエさんまつり」や「桜新町 ねぶた祭」など、さまざまなイベントも住む人にとっては楽しみのひとつ。

活気ある商店街振興組合が街を盛り上げています。

■日本で初めての分譲住宅地として発展。著名人にも愛される閑静な街並み

商店街を脇にそれると、そこには閑静な住宅地が。桜新町は明治45年から大正2年にかけて日本で初めて分譲住宅地「新町分譲地」として開発されました。それにより、現在の落ち着いた街並みが形成されたのです。

▲住宅地はとても静か。サザエさんでイメージする街の雰囲気とは少し違いますが、ファミリー層も多く、治安はとても良さそうです

そんな桜新町は著名人も多く住む街。かつては女優の杉本彩さんや、演歌歌手の水前寺清子さん、漫画家のやくみつるさんなどが街の催しにもしばしば登場し、桜新町在住であることを公言していました。

■ジャンルにとらわれず良いものにアンテナを張り、新旧問わず受け入れる……それが桜新町

さまざまな飲食店が店を構える桜新町の中で初のライブレストランとして2016年の7月にオープンしたのが、桜新町駅の西口から徒歩4分の場所にあるNEIGHBOR(ネイバー)です。

店内のサウンドプロデュースや企画を担当している河原真さんは、自分自身もプロのベーシスト。この街に住み、この街で働く河原さんに桜新町への思いを伺いました。

(※以下、「」内は河原さんのセリフです)

▲同店のサウンドプロデュースを担う河原真さん。ロックバンド「ROCK’A’TRENCH(ロッカトレンチ)」のベーシストとしてメジャーデビューを果たし、2011年のバンド活動休止後も有名アーティストのサポートやベースレッスンなどで幅広く活躍している

――河原さんはなぜ桜新町でお店を始めたんですか?

「この場所を選んだのは僕ではなくてオーナーの意向なんですけどね。理由として僕が聞いているのは、桜新町って意外とたくさんのミュージシャンが住んでいるのに、ライブができる場所がなかったから、作ってしまおうという発想だったみたいです。僕もこの辺に住んで長いので、桜新町から新しい音楽を発信したいという気持ちがありました」

▲入り口にあるNEIGHBORの看板

――どんなお客さんが多いですか?

「みなさん純粋に音楽好きで、耳が肥えているなと感じます。『高円寺ならパンク系』、『横浜ならジャズ系』とか、音楽ジャンルのイメージが確立されている街とは違い、桜新町はまだ音楽シーンが完成されていません。それはネガティブな意味ではなく、ジャンルレスで柔軟に『いいものはいい!』と受け入れる姿勢があるということ。そういう雰囲気のせいか、一流のミュージシャンも他では見せないリラックスした演奏を聞かせてくれます」

――桜新町の魅力はなんだと思いますか?

「多様性を受け入れる雰囲気があって、僕みたいな地方出身者でも住みやすいです。僕は広島から上京して東京で何回か引っ越しをしました。その中で一度桜新町に住み、その後全然違うところに移り住みましたが、数年経ってまたここに戻ってきました。他の街を知って改めて桜新町の住みやすさを実感しましたね。そして、この住み心地を支えてくれているのが商店街の存在だということを、店を始めてわかりました。まだオープンして3年目の若い店ですが、商店街の組合の先輩からは本当によくしていただいています」

■別荘地のような下町のような……これが「東京の普通の暮らし」

桜並木が続く美しい街の景観と閑静な住宅地は、まるで別荘地のよう。その街並みはサザエさんが住む磯野家のイメージと少し違いますが、一方で活気のある商店街からは下町にも似たムードが漂います。

店のラインナップの充実感以上に、各店が結束して街を盛り上げようとするその雰囲気にワクワクが込み上げてきました。

桜新町は「東京の普通の暮らし」を象徴する街。

商店街でふと立ち止まり、瞳を閉じて耳を澄ませば、お魚くわえたドラ猫を追いかけるあの人の声が聞こえてくるような気がしました。

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