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不動産コラム | マンションを購入する前に知っておきたい、大規模修繕とは?かかる費用や工程をご紹介

マンションの劣化を修繕する「大規模修繕」

将来を見通してマンションの購入を検討していると、「大規模修繕」のことが気になる人もいるのではないでしょうか?
新築マンションであっても、当初は新しくきれいな物件ですが、当然ながらマンションも、暮らすほどに建物や設備は劣化していきます。マンションの建物は、共有部分と専有部分に分かれており、エントランスや駐車場、ゴミ置き場などマンションの所有者全員で共有する建物部分を共有部分といいます。
この共有部分の経年に伴う劣化を定期的に、大がかりに修繕することを「大規模修繕」といいます。

マンションでも一戸建てでも、物件によっては築年が10年も経てば劣化が現れ始めることがあります。マンションは集合住宅であるため、マンションの経年劣化を修繕するに当たっては、所有者全体として取り組む共有部分と、個人が専有する部分との双方を考える必要があります。共有部分は、大規模修繕によって補修しますが、専有部分は各自で行う必要があるからです。

マンションの共有部分と専有部分とを見ただけで区別するのは、難しいのです。
たとえば、駐輪場や車庫、専用庭などは、物件によって共有・専有の区別が違っていることがあります。また、普段暮らしていると専有部分だと思える住宅の玄関扉は、内側こそ専有部分ですが、外側は共有部分になります。ほかにも、窓枠やサッシ、バルコニー、給排水管やガス管は途中から共有部分にあたるため、自己判断で修繕を行うことができません。なお、給排水管やガス管の専有部分の下部にあたる枝管は専有なので、自分で修繕しなくてはならないのです。

共有部分と専有部分の区別は、マンションごとに管理規約に定められているので、マンション購入時にあらかじめ確認しておいた方がよさそうですね。

今回は、大規模修繕が必要な理由やかかる費用、修繕までの流れなど、購入前に知っておきたい大規模修繕の基本的な内容についてご紹介しましょう。

外壁の補修工事をしているマンション

大規模修繕はなぜ必要?

これまでは13年から16 年の間周期で修繕が行われていることが多かった大規模修繕。建築基準法によって、今後は12〜13年周期で行われることになるといわれています。大規模修繕は、「経年劣化を補修・修繕する」ということ以外の役割もあります。大規模修繕はなぜ行われるのでしょうか?

マンションも時間が経つと劣化する

マンションも経過する年数と共に劣化します。たとえば、マンションの外壁や屋根など外部は紫外線や風雨にさらされると、乾燥し、ひび割れやシミが発生します。具体的に修繕が必要になる箇所には下記が挙げられます。

区分 具体的な箇所
共有部分 外壁、屋根、屋上やバルコニー、手すりなど鉄部分、給排水配管(共用管)、エレベーター、共用廊下・階段、エントランス、管理室、宅配ボックス、機械式駐車場、など
共有部分のうち専用使用部分(個人使用が認められている共有部分) 玄関扉(外側)、窓ガラス及び窓枠、サッシ、バルコニーおよびルーフバルコニー、玄関ポーチ、1階の専用庭、専用使用駐車場、トランクルーム

また、専有部分である玄関扉(内側)、給排水・ガス給湯配管の専有部分にあたる部分(枝管)は個人で修繕する必要があります。

劣化が進むとマンションの資産価値が下がる

大規模修繕を行わないままマンションの経年劣化を放置すると、マンションの資産価値が下がる恐れがあります。建物の劣化は、雨漏りや水漏れなどを起こし、生活に支障をきたす可能性が高くなります。また、見た目にも劣化が現れ、住み心地がよくないと感じることがあるかもしれません。

こうしたことにより、マンションの住宅としての価値が減少してしまうと、売却するときや賃貸として人に貸すなどのとき、価格や家賃が下がってしまいます。これは資産価値が下がってしまったことになります。大規模修繕は、人生最大ともいわれる資産の価値を維持するためにも非常に大切なものなのです。

また、中古マンションの購入者には、大規模修繕の有無や修繕内容など履歴を報告することが法律で義務付けられています。マンションの修繕がしっかりされているかどうかは、マンション購入を決める1つの要素となります。
では、この大切な大規模修繕にはいくらぐらいの費用が必要なのでしょうか?

マンションの大規模修繕の費用はいくらかかる?

大規模修繕の費用は、マンションの規模や構造によって違いますが、国土交通省によるマンションの総合調査のうち管理の現状の結果から、大規模修繕にかかる費用の平均的な金額が発表されています。

マンションの模型とお金

マンション一戸あたりの大規模修繕の費用

国土交通省の調査結果によると、マンションの大規模修繕の一戸あたりにかかる費用の相場は、次の通りです。※1

・75万円~100万円(30.6%)
・100万円~125万円(24.7%)
・50万円~75万円(13.8%)

マンションの大規模修繕は、1回の大規模修繕で一戸あたり、おおよそ100万円前後かかるということになりますね。100戸のマンションで考えると約1億円が大規模修繕の費用となる計算です。

毎月の修繕積立費の相場は1万1243円

マンションの大規模修繕のためにマンションの住民が毎月積立てている修繕積立費は、平成30年度の調査では、平均1万1243円※2です。平成25年度以前の調査と比べても上昇傾向にあります。また、積立金の積立額が計画に比べて不足していると回答しているマンションも34.8%となっているので、この修繕積立金の上昇傾向は続く可能性があります。

マンションの大規模修繕はどのように行われるの?

マンションの大規模修繕は、具体的にどのような手順で行われるのでしょうか?
最近では、特に大規模なマンションでは、マンションの管理組合の中に有志の「大規模修繕委員会」を発足して進める形が多くなってきています。一方、規模のそれほど大きくないマンションでは、マンションの所有者全体で組織する「管理組合」や、管理組合を運営する「理事会」が主導する形がまだ一般的なようです。

ここでは、大規模修繕委員会を発足した場合のマンションの大規模修繕の6つの過程をお伝えします。

会議の様子

[ 1 ] 大規模修繕委員会を発足する

大規模修繕の予定時期の数年前からマンション管理組合が「大規模修繕委員会」を組合員に向けて募ります。大規模修繕委員会は、毎月修繕積立金を払っているマンションの所有者である管理組合員ならば誰でも参加資格があります。大規模修繕委員会はマンションの管理組合の中に理事会とは別に組織されます。その際、大規模修繕委員会は、マンションの管理組合の理事会の下位組織に位置付けされます。

募集に対して参加人数が不足したり、管理組合が不要と判断したりなど、大規模修繕委員会が発足されなかった場合、マンションの管理組合はマンションの管理会社に大規模修繕に関する方針や計画の作成を依頼することもあります。
もともと大規模修繕委員会が発足されないマンションでは、理事会が中心となって管理組合としてマンションの管理会社と協力しながら大規模修繕について方針や計画を作成していきます。

[ 2 ] 物件の診断を行い、劣化状況を調査する

大規模修繕にあたっては、まずマンションの建物の劣化状態を調査します。この際、大規模修繕専門のコンサルタント会社や建設会社、マンションの施工会社などに大規模修繕のための建物(劣化)調査(診断)を依頼します。
大規模修繕委員会の役割としては、こうした調査をどこに依頼するのかをきちんと見極めることになりますが、大規模修繕は高額になり、失敗は許されませんので、非常に重要なポイントになります。

建物調査では、建物や共用設備の劣化状態を確認します。通常は、建物調査の前に事前調査を行い、どのような修繕が必要で、その最適な修繕方法、おおよその予算(見積もり)を報告書や提案書という形で提出して貰います。

[ 3 ] 修繕の方針を決定する

建物調査が終わり、劣化の状態を把握した後、大規模修繕の方針を決定します。決定にあたっては、専門のコンサルタント会社やマンションの施工会社、工事会社から出された調査結果をもとにした提案書や見積もりを検討し、大規模修繕委員会(管理組合)として依頼する工事の内容や予算を決めます。ここで計画をもとに、積立てられた資金が足りない場合は大規模修繕の資金繰りとして一時金の徴収を検討することもあります。

また、大規模修繕委員会は、実際に建物の確認・報告を定期的に行い、マンションの所有者全体の理解を得るための役割も担います。そのために、大規模修繕委員会は、大規模修繕に関する臨時の管理組合総会などを開催して、組合員の合意を得て方針を決定します。

打ち合わせ

[ 4 ] 見積もりを依頼する

大規模修繕の基本的な方針と計画がおおまかに決定したら、正式な見積もりを依頼します。複数の会社から見積もりを提出してもらい、施工箇所の詳細、施工方法や施工期間、費用などを比較するのが一般的です。

[ 5 ] 工事会社を決定する

施工を依頼する工事会社を決定するにあたっては、大規模委員会(管理組合)が、マンションの所有者全体の総意を決定するための管理組合総会を開催します。総会では、大規模修繕の程度によって所有者(管理組合員)の議決に必要な賛成者数も異なります。共有部分の軽微な変更にあたる場合は過半数、重大な変更となる場合は3/4以上の賛成が必要となります。

総会では、見積書と提案内容、工事体制や会社の現場担当者など候補となっている工事会社の情報を組合員に伝えつつ、委員会で検討し最も望ましいと考えられる委託先を提案します。質疑応答を経て、議決を取り、マンションの組合員の必要な賛成を得た上で、工事会社を決定し、大規模修繕工事の委託先を決定、契約します。

[ 6 ] 大規模修繕工事を実施する

大規模修繕工事の契約締結後、大規模修繕工事が実施されます。マンションの規模や修繕の内容により異なりますが、一般的なマンションでは、大規模修繕の工事期間はだいたい3ヵ月~4ヵ月といわれています。しかし、大規模なマンションや修繕内容が多岐にわたる場合は、全体が完了するまでの工期が1年に及ぶ場合もあります。

大規模修繕工事は、施工する工事会社やコンサルタントなどから提出された工事計画をもとに行われます。大規模修繕委員会(委員会が設置されない場合は理事会)のメンバーは、大規模修繕工事が工程の通りに行われているか、進捗状況を確認する必要があります。または、大規模修繕の管理を、専門のコンサルタント会社や管理会社に委託している場合は、途中経過の報告を求めることができます。

大規模修繕工事の代表的な工程は次のようなものがあります。
・組合員、居住者への通知
・共通仮設物や足場の設置
・外装工事(外壁、屋上、ベランダなど)
・建物内共用部工事(共用廊下、階段、壁面・天井など)
・共用設備(エレベーター、オートロックなど)の工事およびリフォームなど

大規模修繕工事中、大規模修繕委員会は、工事会社と居住者のかけ橋となり、工事の推進と居住者の理解に努める役割を担うことがあります。

大規模修繕中の生活って?

大規模修繕工事中は、マンションの居住者の生活に少なからずの影響が及びます。たとえば、大規模修繕では、ベランダの工事が行われることが多くなります。ベランダで工事業者の人が作業するため、足場が設置されて住宅の前を人が行き交うほか、洗濯物を外に干せなくなり、臭いや粉じんが室内に入るのを防ぐため、窓を開けられなくなります。ほかにも以下のようなことに気を付ける必要があります。

・ベランダの物は全て室内にしまう(ウッドデッキや植物などは撤去を求められる場合も)
・網戸を外し、一時的に室内に保管する
・アンテナは取り外して保管する(BSアンテナやCSアンテナなど)
・エアコンの室外機を移動する(移動しなくてもよい場合もある)
・駐車場の車の移動をお願いされる場合がある
・一時的に廊下や階段が使用できなくなり、建物内で迂回する

大規模修繕はみんなが「当事者意識」を持つことが大切!

マンションと自転車に乗る人

大規模修繕は、日々の住みやすさを維持し、マンションの資産価値を守ります。大規模修繕を滞りなく完了させるにはマンションの住民一人一人が、当事者意識を持つことが必要といえるでしょう。

大規模修繕の費用は、所有者一人一人の毎月の修繕積立金から支出され、大規模修繕では大きな金額が必要になります。ただし、数年前から準備が必要で、さまざまな専門家に依頼するとしてもその検討に手間がかかるため、大規模修繕委員会や理事会のメンバーなど他人任せになってしまう人もいることでしょう。
マンションの購入を考えている人は、購入前から検討しているマンションの大規模改修の予定がいつ頃なのか、修繕積立金は毎月どのくらい払うのかなど大規模修繕について確認する事も大切ですよ。

およそ12年から13年毎に一度行われる大規模修繕は、マンションに30年~40年住み続けた場合には、3度経験する計算になります。マンションを購入した際は、ぜひ、他人ごととは思わず、当事者意識を持って大規模修繕に協力するようにしてくださいね!

※1 出典:マンション大規模修繕工事に関する実態調査, 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001234283.pdf
(最終確認:2020年9月16日)

※2 出典:平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状, 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001287570.pdf
(最終確認:2020年9月16日)

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