「都心」か「新・首都圏」か? “新婚さん”が選ぶならどっち?

時代とともに家族構成もずいぶんと変遷を遂げているようです。かつては日本の家族の典型とされた祖父母、両親、子供たちが同居する「3世代世帯」は減少傾向にあり、いまや珍しい部類に入ります。

実は、国内の総世帯のおよそ半分は「単身世帯」と「子供のいない夫婦世帯」で占められているのです。

「単身世帯と聞けば、大学生や若いサラリーマンやOLを想像するかもしれませんが、もっとも多いのは老人世代です。その単身世帯と、子供のいない夫婦世帯で全体の半分ですから、どれほど子供が世の中に少ないのかが世帯構成からでもわかりました。心に不安が広がりそうですが、逆に明るい兆しもあります。それは子供のいない夫婦には、新婚さんも含まれていることです。結婚していきなり別居する夫婦は少数派でしょうから、大概の新婚さんは結婚を機に新居を構えます。そのため、不動産業界や建設業界は新婚カップルに大きな期待を寄せているそうです」(不動産アナリスト)

また、「婚活」という言葉が流行ったように、なかなか結婚できない人が多いなか、すでに結婚しているカップルは、経済的にも社会的にも恵まれていると見られています。

「結婚しても奥さんを養えない」「子供を育てる余裕がない」など、経済的な困窮を理由にして結婚に踏み切れない男性も多いそうですから、確かに恵まれているといえるでしょう。

そうした新婚さんたちは、どのような街で新しい生活をスタートさせるのか、2組の新婚さんにお話しをうかがってみました。まずは都内に住む男性です。

「都心3区(千代田区・中央区・港区)以外の物件はまったく眼中にありませんでしたね。直下型などの大地震が発生した際の安全性や、毎日の通勤時間など、あらゆる面を考慮した結果、やはり都心に住むことがベストだとの答えに至りました。妻の家族から『安全への配慮を最大限に払うならば』との条件で結婚を許されたのも大きな理由のひとつです。確かに家賃は安くないですが、命や時間はお金に代えられませんから」(外資系証券会社勤務・30代)

お金では買えない価値がある物への出費は惜しまないようです。コンシェルジュが常駐する高級低層マンションに、ヨーロッパ出身の奥様と住む彼は、ただのキレ者証券マンではない雰囲気を漂わせていました。

「家賃分を未来に回したい」新婚さんの物件探し

続いて、「新・首都圏」ともいわれる関東近郊の小都市にある奥様の実家に住む男性です。

「私はバブル崩壊以降の景気がずっと低迷している期間に成長したものですから、どうしても大きくお金を使うことが怖くてできません。しばらく前、中国人旅行者が日本で『爆買い』をしているというニュースをテレビで見たときも、『スゴイ』と感じるより『どうせ間もなくバブルがはじける』と思いました。実際、どうなったのかは詳しく知りませんが、中国経済が低迷しているのは間違いありません。日本にいても経済的不安は消えないので、せめて貯蓄だけは力を入れています。幸い妻の実家なので、家賃は払わずに済むので助かってますが、浮いた分もすべて貯蓄です」(大手電機メーカ勤務・30代)

平日は空いていて座れる電車に乗るため、朝6時には家を出て都心まで通勤し、休日には夫婦で自転車に乗り、近所の庶民派スーパーを巡ってセール品をまとめ買いしているそうです。また、掘り出し物を見つけたときが何よりも楽しいと目を輝かせて語ってくれました。

対照的な新婚さんの2人でしたが、実は世間の平均を大きく上回る年収を受け取っているという共通点があります。しかし、経済面における考え方の相違から、居住するエリアには大きな隔たりが生まれてしまったようです。

高額の賃料で安全と快適さを追求することと、家賃分を未来に託すことは、どちらかが良くて、どちらかが悪いという違いはありません。双方の新婚さんにとって、それぞれ最良の選択なのです。

新婚さんの数だけライフスタイルの形があるようですから、ご夫婦が共に納得するまでトコトン話し合って、自分たちに合う形を見つけてほしいと思います。

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